ビジネス法務

【契約書のトリセツ】取引先に条文の意味を聞かれたとき、営業はどう答えるべきか?

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.はじめに

わたしが企業の法務部で働いていた頃、営業の方から「この条文って、どういう意味?」と聞かれることがよくありました。
でも、ただ確認して終わるのではなく、自分の言葉で説明したいと真剣に学ぼうとする営業の方もいらっしゃって、とても印象に残っています。

その方は、こんなことを言っていました。

「契約って、商談の“最終確認書”ですよね。
だから、お客さまから聞かれたら、ちゃんと自分で答えたいんです。」

その姿勢は、実際の商談の場面でも信頼につながっていて、「契約書の内容を自分の言葉で語れる営業」はやっぱり強いなと実感しました。

今回は、そんな現場感覚をもとに、取引先に条文の意味を聞かれたときの答え方をわたしなりにまとめてみました。


ケース①:損害賠償の上限に関する条文

「この“損害賠償責任が販売代金額を上限とする”ってどういう意味?こっちが損したら泣き寝入りなの?」

ある商談の場面で、営業の方がこう説明したそうです。

「そう思われるのももっともだと思います。
ただ、この条文があるからこそ、お客様のご希望されるこの価格で提供できているという背景があるんです。
もし、損害賠償が青天井のリスクを引き受けるとなると、
会社としては、その分、販売代金にリスク分のコストを上乗せしないと対応できません。
だからこの条文は、“想定できる範囲内のリスクでビジネスを回す”ためのものなのです。」

→ポイントは、「リスクを減らすからこそコストも抑えられる」という価格とのバランスを丁寧に伝えているところです。

ケース②:納期遅延や不可抗力条項について

「“天災地変ややむを得ない事由があるときは納期の責任を負わない”って…都合よすぎない?」

このときの営業トークも、すごく誠実でした。

「たしかに“責任を負わない”って聞くと、ちょっと不安になりますよね。
ただこの条文は、当社ではどうにもできない出来事が起きたときにまで、違約金の責任を問われないようにするためのものなんです。
たとえば、台風で倉庫が浸水したり、急な停電で生産ラインが止まったりした場合などが想定されています。

もちろん、通常の遅れであればこちらの責任ですし、その場合は事前にしっかりご連絡して、誠実に対応します。
この条文は、トラブル時にお互いに冷静に協議する余地を残すための、“お守り”みたいなものだと考えていただけたらと思います。」

→ 「免責=無責任ではない」という点を、きちんと伝えるのが大事なんです。


①「上の指示なので」「法務が決めたので」はもう卒業!

たとえ社内フォーマットでも、それを現場で使う営業自身が“会社の言葉”として話せるかどうかが信頼につながります。
「上の指示なので」「法務が決めたので」「顧問弁護士がうるさいので」などの他責思考だと、お客様から頼りなく見えてしまいます。

②「なぜこの条文があるのか」を伝える

内容を覚える必要はありません。でも、

  • どういう目的で入っているのか
  • どんなトラブルを防ぐためか

をかみ砕いて話せると、お客さまの納得度はぐっと高まります。

③「確認してご連絡します」は立派な答え

その場で即答できなければm堂々と「確認して折り返します」と伝えてOK。
大事なのは、いつまでに回答するかをセットで伝えること。

→「明日中に法務と確認して、あらためてご連絡します」など、期日を明示するだけで、印象が大きく変わります。


  • 「取引先からこういう質問がありました。リスクの背景や調整の余地ってありますか?」
  • 「この条文、目的を一言で言うと何になりますか?」
  • 「もう少しやわらかく説明できる表現はありますか?」

→ 法務と営業がうまく連携できれば、契約書は“味方”になります。


✅ 条文の“目的”を伝えることで信頼が深まる
✅ 法務の言葉を“自分の言葉”に変えてみる
✅ 分からないときは、堂々と「確認して期日までに折り返します」でOK
✅ 営業と法務の連携が、契約を“生きたツール”にする

「契約を語れる営業は、信頼される営業。」

お客様からの「契約書第○条のこれってどういう意味ですか?」は、あなたと会社が信頼できるかどうかを試されている瞬間かもしれません。
この問いかけに自分の言葉で返せるようになれば、契約書は営業トークの“最終兵器”にもなり得ます。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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