ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 0.前回までの整理(第3回までの振り返り)
- 1.「いい記事」と「仕事につながる記事」は違う
- 2.ブログの目的は「理解」ではなく「行動」
- 3.ブログを構成する「6つのステップ」
- 4.後工程で使っている「法的三段論法」という武器
- 5.専門家がやりがちな「最悪の書き出し」
- 6.ステップ4「本質」で最大の注意点
- 7.「この限りではない」という言葉の怖さ
- 8.ロングセラー記事の正体
- 9.究極の「噛み砕き」は中学生の辞書にある
- 10.本質(大前提)とは「翻訳作業」である
- 11.適用(小前提)で「自分ごと」にする
- 12.提案(判断)まで書いて、初めて仕事になる
- 13.記事が「長い」のは欠点ではない
- 14.今日からできるアウトプット課題
- 15. まとめ
0.前回までの整理(第3回までの振り返り)
この「ブログ術」シリーズでは、
「ブログが続かない」
「発信をしているのに、仕事につながらない」
と感じている専門家・士業の方を中心に、
日々の実務や思考を、
どうやって“伝わる言葉”にしていくか
というテーマを、段階的に整理しています。
このシリーズを通して、
ずっと一貫してお伝えしていることがあります。
それは、
- 文章が下手だから伝わらないわけではない
- 知識が足りないから読まれないわけでもない
ということです。
多くの場合、
問題は 書き手の能力 ではなく、
文章の組み立て方(構造) にあります。
ここまでの3回で、
私たちは「前工程」と呼んでいる部分を、
かなり丁寧に扱ってきました。
第1回では、
「何を書くか」以前に、
読者が抱えている違和感や問いをどう見つけるか
という話をしました。
第2回では、
その問いに対して、
自分はどう考えているのか(スタンス・意見表明)を
はっきり書かないと、何も伝わらない
という点を整理しました。
そして 第3回では、
スタンスを書いた“その後”に起きがちな問題、
つまり、
- なんだか偉そうに見える
- 距離を感じる
- 読まれなくなる
といった違和感の正体が、
「共感が抜け落ちていること」 にある、
という話をしました。
結論と説明のあいだに
「共感」を挟むことで、
意見表明は 上から目線ではなく、
読者のものとして受け取られる。
ここまでが、
ブログを書く上での 前工程(仕込み) です。
今回から扱うのは、
いよいよ 後工程 の話です。
前工程で整えた土台の上に、
専門家としての価値をどう載せていくのか。
その入口となるテーマが、
専門用語を、どう噛み砕くか
です。
なぜ、
専門用語をそのまま使うと伝わらないのか。
なぜ、
噛み砕けると「仕事」につながるのか。
ここから先は、「書き方」ではなく
専門家としての思考やスタンスそのもの の話ともいえます。
1.「いい記事」と「仕事につながる記事」は違う
ブログを13年以上書き続けてきて、
ある時から、はっきりと感じるようになったことがあります。
それは、
「共感されるいい話」と「問い合わせが来る記事」は別物だ
ということです。
読まれている。
反応もある。
「分かりやすかったです」「勉強になりました」というコメントももらえる。
それなのに、
仕事にはつながらない。
逆に、
- 派手な主張をしているわけでもない
- バズっているわけでもない
- 専門的な議論をしているわけでもない
そんな記事から、
静かに、しかし確実に問い合わせが入る。
この差は何なのか。
文章力の問題なのか。
実績の問題なのか。
SNSの使い方なのか。
いろいろ考えましたが、
今でははっきりしています。
違いはただ一つ。
読者を「判断」まで連れて行っているかどうか
です。
2.ブログの目的は「理解」ではなく「行動」
ここで、
今回の「ブログ術」の目的をあらためて整理しておきます。
私たち専門家がブログを書く目的は、
専門家同士で知識を競うことではありません。
また、
自分の頭の良さや実績を証明することでもありません。
本当の目的は、
まだ何も知らない、
何を相談していいかも分からない状態の 見込み顧客(以下「ペルソナ」) に対して、
- この人は話を分かってくれそうだ
- 自分の状況を整理してくれそうだ
- 一度、相談してみたい
そう感じてもらい、
問い合わせという行動に移ってもらうことです。
そのためには、
- 正しいことを書くだけ
- 分かりやすく説明するだけ
では、足りません。
論理的で、再現性のある「型」 が必要になります。
3.ブログを構成する「6つのステップ」
ここで、
私がブログを書く際に常に意識している
6つのステップを、あらためて整理します。
ブログを構成する6つのステップ(スケルトン構造)
- 課題(問い):読者の悩み・違和感を見つける
- 結論(意見表明):自分のスタンスを明確に示す
- 共感:読者の「あるある」に寄り添う
— ここまでが前工程(仕込み) — - 本質(ルール):専門知識を語る
- 適用:課題にルールを当てはめる
- 提案:判断・出口を示す
第1回から第3回までは、
ずっと 前工程(1〜3) の話をしてきました。
なぜか。
それは、
ここを飛ばしてしまうと、
どんなに正しい専門知識を書いても、
「上から目線」「偉そう」 と受け取られてしまうからです。
4.後工程で使っている「法的三段論法」という武器
ここから先、少し専門家寄りの話をします。
私が後工程(4.〜6.)で使っている思考フレームは、
法律専門家が日常的に使っている 法的三段論法 です。
これは、
- ルールがあって
- 事実があって
- だから結論が出る
という、
極めてシンプルで、切れ味の鋭い思考法です。
構造だけ書くと、こうなります。
- 大前提(ルール):法律や決まりはこうなっている
- 小前提(事実):目の前の状況はこうである
- 結論(判断):したがって、こう考える
このフレームは、非常に説得力があります。
しかし、ここに大きな罠があります。
5.専門家がやりがちな「最悪の書き出し」
多くの専門家ブログが、ペルソナになぜ読まれないのか。
理由はシンプルです。
いきなり「大前提」から書いてしまうからです。
- 法律ではこう決まっています
- 契約書ではこう書くのが原則です
- 一般的にはこのように考えられています
専門家にとっては当たり前でも、
ペルソナからすると、
「うわ、難しそう……」
「自分には関係なさそう……」
と、一瞬で距離が生まれます。
だからこそ、
前工程(課題・結論・共感)で
しっかりと仕込みをしておく必要があるのです。
6.ステップ4「本質」で最大の注意点
前工程でペルソナの心が開いたところで、
いよいよステップ4、本質(ルール) に入ります。
ここが、専門家としての腕の見せどころです。
ただし、ここで最大の注意点があります。
それは、
専門用語を、そのまま使わない
ということです。
7.「この限りではない」という言葉の怖さ
たとえば、法律や契約書の世界では、
ごく当たり前に使われる言葉に「この限りではない」 があります。
例として、こんな文章を考えてみてください。
缶コーヒーをあげます。
ただし、仕事をサボった場合はこの限りではありません。
専門家から見れば、何の問題もない文章です。
しかし、一般の方は一瞬、頭の中で引っかかります。
- 「この」って何を指しているの?
- どこまでが例外なの?
- 結局どうなるの?
生活レベルの言葉で言えば、
「サボったら、缶コーヒーはあげません」
これだけの話です。
情報量は変わっていないのに、理解度はまったく違う。
8.ロングセラー記事の正体
私自身、アメブロ時代の記事を
WordPress向けにリライトしてきました。
10年以上前に書いた記事を、
今の感覚で読み直す作業です。
その中で、
ある共通点に気づきました。
ずっと読まれ続けている記事は、
決まってこうでした。
- 難しい理屈を書いていない
- 抽象論ではなく具体例である
- 当たり前の用語を、丁寧に説明している
つまり、
専門用語を、生活レベルの言葉に噛み砕いている
それだけです。
9.究極の「噛み砕き」は中学生の辞書にある
ここで、よく驚かれる話をします。
私は、専門用語を噛み砕くとき、
中学生向けの国語辞典を使っています。
たとえば、三省堂の『例解新国語辞典』です。
理由は単純です。
- 抽象語を使わない
- ごまかさない
- 生活の言葉で説明している
つまり、
中学生に説明できるかどうか
これが、
本当に理解できているかどうかの
一つの基準になります。
中学生に説明できないものは、
大人にも伝わりません。
10.本質(大前提)とは「翻訳作業」である
ここまで来ると、
本質パートの役割が見えてきます。
本質とは、
知識を並べることではありません。
専門家の言葉を、
読者の言葉に翻訳すること
です。
- ルールをほどく
- 前提を言葉にする
- 読者の理解レベルに合わせる
これこそが、専門家にしかできない仕事です。
11.適用(小前提)で「自分ごと」にする
大前提が共有できたら、
次は 適用(小前提) です。
つまり、
「じゃあ、あなたの場合はどうなのか」
を一緒に考える。
- どんなケースがあるのか
- どこで判断が分かれるのか
- 何がポイントになるのか
ここで初めて、
読者は 自分の問題として考え始めます。
12.提案(判断)まで書いて、初めて仕事になる
最後に、
提案(判断) を示します。
- ここは自分で対応できる
- ここから先は専門家に相談した方がいい
- 一度、整理してみましょう
ここまで書き切った記事だけが、
問い合わせにつながります。
煽る必要はありません。
売り込む必要もありません。
読者自身が、
「これは一人では判断できないな」
と感じた結果として、問い合わせが生まれます。
13.記事が「長い」のは欠点ではない
私のブログ記事は、
意図的に長くなっています。
理由はシンプルです。
- 本質論を噛み砕き
- 具体例を整理し
- 判断まで一緒に考える
これをやるとどうしても長くなってしまいます。
そして、最後まで読んでくれる方こそが、
私の理想のペルソナです。
14.今日からできるアウトプット課題
最後に、今回のアウトプット課題です。
✏️ 課題
あなたの専門分野で、
「当たり前すぎて説明する必要もない専門用語」 を一つ選んでください。
- 司法書士の先生なら例えば「登記とは」など
- 社労士の先生なら「ハローワークとは」など
- 行政書士の先生なら、ぜひ「行政書士とは」(これが一番難しいかも!?)
それを、
- 役所の説明ではなく
- 中学生にも分かる
- 生活レベルの言葉で
説明してみてください。
不思議なことに、
私が一番仕事につながっている記事は、
この「当たり前の用語」を解説したものだったりします。
(アクセス数が多いため、頻繁に更新して「強く」しています)
15. まとめ
専門用語を噛み砕くことは、
レベルを下げることでも、
分かりやすく“見せる”ためのテクニックでもありません。
それは、
専門家として、相手の思考を前に進めるための仕事です。
ここまでで私たちは、
- 読者がどこでつまずいているのかを言葉にし
- 自分の立場を明確にし
- 読者に一度きちんと寄り添い
- 専門用語を「翻訳」することで、前提を共有してきました
つまり、
同じ地図を、一緒に見られるところまで来た
ということです。
ここまで来て、ようやく
専門家としての話が「伝わる状態」になりました。
ただし、
ここで終わってしまうと、
まだ「いい話」で終わってしまいます。
次に必要なのは、
その地図を どう現実に当てはめるのか です。
同じルールを前にしても、
- 人によって何が違うのか
- どこが分かれ道になるのか
- 判断が変わるポイントはどこなのか
ここを整理できて、はじめて
読者は「自分の場合」を考え始めます。
次回は、
この当てはめの工程、
つまり 「適用」 を取り上げます。
専門家は、
何を基準にケースを分け、
どこを見て判断しているのか。
ここが見えるようになると、
ブログは読み物ではなく、
相談につながるブログ記事にに変わります。

【音声解説】
本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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