ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 0.前回までの整理
- 1.「自分ごと化」
- 2.なぜ多くのブログは自分ごと化に失敗するのか
- 3.「半径2メートル」を書く
- 4.ペルソナは「設定」ではなく「特定」する
- 5.万人に伝えようとした瞬間、誰にも伝わらなくなる
- 6.それが結果的にSEO対策になる理由
- 7. 【実例】仕事を生み続けているいる「超マニアックな記事」の裏側
- 8.「尖る」とは、特殊なことを言うことではない
- 9.「適用=自分ごと化」が書けると、文章は「相談の入口」になる
- 10. まとめ
- 11. 今日からできるアウトプット課題
- 🔎 参考記事
0.前回までの整理
この「ブログ術」シリーズでは、
文章テクニックではなく、
仕事につながる文章は、どんな思考プロセスで書かれているのか
を分解して整理しています。
第1回〜第3回では、
- 課題(問い)
- 結論(スタンスの明確化)
- 共感(あるある、わかる)
という、
読者が「読む気になる」入口の設計を扱ってきました。
第4回ではそこから一歩踏み込み、
- 本質(大前提に該当:ルールや専門概念の加味ください)
- 適用(小前提に該当)
- 提案(結論に該当)
という、
行動につながる後半構造を整理しました。
特に強調したのが、
専門用語を噛み砕くことは、
レベルを下げることではない
専門家としての「翻訳の仕事」そのものである
という視点です。
今回の第5回では、
その後半構造の中でも、
最も成果を左右する 「適用(小前提に該当)」 を扱います。
1.「自分ごと化」
まず、はっきりさせます。
(ここでいう)適用=自分ごと化
これ以外の定義はありません。
適用とは、
- 理屈を説明することでも
- 正解を教えることでも
- 事例を並べることでもない
読者が「これは自分の話だ」と感じる瞬間をつくること
です。
ここを外した瞬間、どれだけ正しく、どれだけ丁寧な文章でも、
それは「他人事」で終わります。
適用というと、「具体例を書くこと」だと思われがちです。
それ自体は、間違いではありません。
適用=具体例
まずはここから始まります。
ただし、
具体例を書いただけで、
文章が読者に刺さるわけではありません。
多くのブログはここで止まります。
- 具体例はある
- 実体験も書いている
- それなりに分かりやすい
それでも読者はこう感じます。
「なるほど。
でも、それは“その人の話”ですよね」
つまり、
具体例が“他人事”のままなのです。
適用で本当に必要なのは、
具体例をもう一段、読者側に引き寄せること。
それが 自分ごと化 です。
- 誰の話なのか
- どこで迷っているのか
- なぜ判断が揺れているのか
この「判断の揺れ」まで書けて、
初めて具体例は
読者自身の問題として立ち上がります。
2.なぜ多くのブログは自分ごと化に失敗するのか
理由は単純です。
最初から「みんな」に伝えようとするから。
- 幅広く当てはまるように
- 誰にも反論されないように
- 万人向けに無難に
そうやって削っていった結果、
文章はこうなります。
どこにでもある一般論
読者の反応は、
- それはそう
- 知っている
- で、うちは?
この時点で、
ページは静かに閉じられます。
3.「半径2メートル」を書く
適用で書くべきなのは、
遠くの話ではありません。
- ニュースの話でもない
- 業界全体の話でもない
- 抽象化された成功事例でもない
書くべきなのは、
自分の半径2メートルで、実際に起きている出来事
です。
- 直近で受けた相談
- 実務で「ここ危ない」と感じた瞬間
- 相手が勘違いしていた前提
- 説明してもなかなか伝わらなかったポイント
派手さはありません。
でも、圧倒的にリアルです。
そしてリアルなものは、
必ず誰かの現実と重なります。
4.ペルソナは「設定」ではなく「特定」する
よくあるペルソナ設定は、
- 年齢
- 性別
- 職業
- 年収
といった属性整理で終わりがちです。
でも、適用で必要なのはそこではありません。
必要なのは、
今、何に困っている「誰か一人」か
です。
- 契約書を前に手が止まっている社長
- 専門家に聞くほどでもないと思って悩んでいる担当者
- 「これくらい大丈夫だろう」と流そうとしている現場
顔が浮かぶレベルまで落とす。
一人でいい。
むしろ、一人でなければ自分ごと化は起きません。
5.万人に伝えようとした瞬間、誰にも伝わらなくなる
ここは重要なので、はっきり言います。
万人に伝わる文章は、
誰の心にも刺さらない。
これは表現の問題ではなく、
構造の問題です。
適用とは、
- 立場
- 状況
- 制約条件
を前提にする作業です。
前提を増やせば、
対象は自然に絞られます。
でも、それでいい。
誰か一人に確実に伝わる文章は、
結果として多くの人に届く
これが現実です。
6.それが結果的にSEO対策になる理由
一般論は、検索エンジンから見ても価値が低い。
- 同じ内容の記事が無数にある
- 差分がない
- 専門家としての判断が見えない
一方、半径2メートルの具体例には、
- 文脈
- 判断
- 体験
- 制約条件
が自然に含まれます。
結果として、
- 滞在時間が伸びる
- 直帰率が下がる
- ロングテールで拾われる
SEOを狙っていないのに、SEOに強くなる。
これが、自分ごと化された文章の強さです。
7. 【実例】仕事を生み続けているいる「超マニアックな記事」の裏側
ここで、最近私のブログで「バズって」いる、
ある記事の話をしましょう。
それは、『新しい型取引のルール』
という、極めてマニアックなテーマの記事です。
正直に言えば、
検索ボリュームも決して多くありませんし、
一般の方が読んで面白い内容でもありません。
では、なぜその記事が刺さったのか?
製造業の現場では、
委託事業者(元請企業)が中小受託事業者(下請企業)に
「金型」などを預けっぱなしにし、
中小受託事業者側が無償で、その大きな型を長期間保管し続ける
という 悪しき慣習 が問題になっています。
実際、公正取引委員会も是正勧告を出しており、
現場では「このままで大丈夫なのか?」という
ピリピリした空気が流れています。
ただし、この問題は、ニュースとしては取り上げられても、
- では現場ではどう対応すればいいのか
- どういう覚書を交わせば角が立たないのか
という 実務レベルの話 になると、
途端に情報がなくなります。
私はこの記事を書くとき、
「多くの人に読んでもらおう」とは、まったく考えませんでした。
頭にあったのは、たったこれだけです。
- 型を預かりすぎて、
保管スペースに本気で困っている下請けの社長さん - 本当は保管料を請求したいけれど、
取引関係を壊さずに、どう覚書を交わせばいいか
悩んでいる担当者さん
つまり、「たった一人の、切実な悩み」です。
結果は、想定外なものでした。
この超マニアックな記事が、
Google検索で、検索ワードの組み合わせによっては、
公正取引委員会、中小企業庁、そして首相官邸の公式サイトよりも上位
に表示されるようになったのです。
日によっては、
1日1000PVを超えるアクセスが集まることもありました。
(当サイトにとっては大きな数字です。)
さらに驚いたのは、その後です。
この記事一本をきっかけに、
- セミナー講師の依頼
- 契約書・覚書作成の相談
が、わずか半年で 16件 も舞い込んできました。
なぜ、こんなことが起きたのか。
理由はシンプルです。
「適用=具体例」を、
さらに「自分ごと化」まで落としきったから。
- 万人向けに書かなかった
- 問題を薄めなかった
- 誰か一人の現実を、
そのまま引き受けて書いた
ただ、それだけです。
これが、「半径2メートルのリアル」が持つ力です。
8.「尖る」とは、特殊なことを言うことではない
尖る=過激
尖る=逆張り
尖る=炎上狙い
ではありません。
本当の意味で尖っている文章は、
誰か一人の問題を、
逃げずに、具体的に、丁寧に扱っている文章
です。
- テーマはありふれていていい
- 新しい理論もいらない
- 特殊な主張も不要
必要なのは、
現場を引き受ける覚悟だけです。
9.「適用=自分ごと化」が書けると、文章は「相談の入口」になる
適用が成立している文章を読むと、
読者の頭の中では、こういう変化が起きます。
- これ、うちの話だ
- ちょっと危ないかもしれない
- 一度整理した方がいい
この時点で、
ブログは情報提供ではありません。
「一緒に考えてくれる人」を探す入口になります。
10. まとめ
誰か一人の課題を、世界で一番丁寧に書く。
適用とは、
- 自分ごと化であり
- 半径2メートルの現実であり
- ペルソナを一人に絞る覚悟であり
- 一般論を捨てる決断です
特殊なことを言う必要はありません。
ただ、
誰か一人の問題を、
逃げずに、超具体的に、丁寧に扱う
それだけでいいのです。
次回は、最終回「提案」についてご説明します。
11. 今日からできるアウトプット課題
ここからは「書き方の練習」ではありません。
思考の確認です。
課題①
最近あなたの半径2メートルで起きた、
- 実務
- 相談
- 違和感を覚えた場面
を一つ選んでください。
※「よくある話」である必要はありません。
むしろ「個人的すぎるかな?」くらいでちょうどいい。
課題②
その出来事を、
- 特定の「誰か一人」に向けて
- 一般論を使わず
- 状況と判断が分かれるポイントだけを
文章にしてください。
※ここでは答えを書かないでください。
「どう考えるかの材料」だけを置きます。
課題③
最後に、こう問いかけてください。
「これ、あなたの話ではありませんか?」
この問いは、
答えを求めるためのものではありません。
- 判断を読者に返すため
- 売り込まずに余韻を残すため
- 適用が成立しているかのセルフチェックのため
この一文が自然に置けるなら、
ここでいう「適用」は成立しています。
🔎 参考記事
制度解説ではなく「判断」を書くと、なぜ仕事につながるのか
— 金型取引という極めてマニアックなテーマから見えた、判断ログの整理

【音声解説】
本記事の内容は、
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▽ 音声はこちら(stand.fm)
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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