ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. はじめに
- 2. 製本テープは法律上必須ではない
- 3. 製本テープが使われてきた理由
- 4. A3両面印刷による効率化の工夫
- 5. ページ数が多い場合の対応
- 6. 電子契約という選択肢
- 7. 紙と電子のハイブリッド運用
- 8. 実務担当者が押さえるべきチェックポイント
- 9. まとめ
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. はじめに
契約書を作成するときに、ホチキスでとじて製本テープを貼り、さらに割り印を押す
――こうした一連の作業を「必ずやらなければならない」と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし実は、契約書の効力に製本テープの有無は関係ありません。
契約は当事者の合意で成立し、その証拠として署名や押印(または電子署名)があれば足ります。製本はあくまで「改ざん防止のための実務的工夫」にすぎないのです。
今回は、「契約書に製本テープは必要か?」というテーマを、実務的な工夫や電子契約との対比も交えて整理します。
2. 製本テープは法律上必須ではない
契約の成立には「当事者の合意」が必要であり、それを証明する手段が署名や押印です。
製本テープの有無は契約の効力に影響しません。
つまり――
- ホチキス止めでも契約書としては有効
- クリップ止めでも署名押印があれば効力あり
- 製本していないからといって「契約が無効」になることはない
この点をまず押さえておくことが重要です。
3. 製本テープが使われてきた理由
それでも製本テープが広く利用されてきたのは、以下のような理由があります。
- 差し替え防止:ページを後からすり替えられるリスクを減らす
- 証拠力の補強:訴訟などで提出した際に「改ざん防止の工夫をしている」と評価されやすい
- 心理的効果:テープで綴じて割り印を押すことで「正式に契約した」という意識を高める
要するに、法律上の要件ではなく「実務上の安心材料」として使われてきたのです。
4. A3両面印刷による効率化の工夫
製本テープの代替策として有効なのが、A3両面印刷で収める方法です。
- A4サイズ4枚の契約書を、A3用紙2枚に両面印刷
- 物理的に差し替えができないので安心
- 製本や割り印の手間が省け、事務効率化につながる
この方法はシンプルで有効ですが、適用条件があります。
- 契約書がA4用紙4ページ以内であること
- A3印刷環境が整っていること
- 社内規程でA4統一を求められていないこと
条件が合えば「製本テープ不要=事務効率化」が実現できます。
5. ページ数が多い場合の対応
一方、5ページ以上の契約書や、不動産・ライセンス・システム開発などの重要契約では、やはり製本テープ+割り印が推奨されます。
理由は明快で、長い契約書ほど改ざんの余地が大きいからです。
裁判になったとき、製本や割り印といった形式的な工夫をしていないと「ページが差し替え可能だったのでは」と相手方に主張される余地を残すことになります。
つまり――
- 短い契約書=A3両面印刷で効率化
- 長い契約書=従来どおり製本テープ+割り印で安全策
という住み分けが実務的です。
6. 電子契約という選択肢
さらに効率化を進めるなら、電子契約が有力な選択肢です。
電子署名法に基づく電子署名やタイムスタンプは、紙の製本テープ+契印(割印)に代わる「改ざん防止機能」を担います。
電子契約のメリット:
- 契約締結から保存・検索までオンラインで完結
- 郵送や押印作業が不要
- 印紙税の課税対象外(紙に印紙を貼る必要がない)
- システムにより改ざん防止が担保される
注意点:
- 導入コストや社内体制の整備が必要
- 相手方が電子契約に応じるかどうかが前提条件
- 一部の行政手続や業界では依然として紙が必要
7. 紙と電子のハイブリッド運用
現実的には、すべての契約を電子化することは難しいのが現状です。
- 大企業や官公庁は紙ベースの契約を求めることがある
- 業界によっては電子契約に馴染みがない場合もある
そこで現実的な解として、紙と電子のハイブリッド運用が広まっています。
- 重要契約や相手の希望がある契約は紙で製本
- 社内契約や軽微な取引は電子契約で効率化
この住み分けが、多くの企業にとって実務的な選択肢となっています。
8. 実務担当者が押さえるべきチェックポイント
最後に、総務・法務・営業事務の方が契約書作成時に押さえるべきポイントをまとめます。
- 製本テープは法律上必須ではない
- 改ざん防止の工夫が本質(ページ差し替え対策をどう行うか)
- 短い契約はA3両面印刷で効率化できる
- 長い契約や重要契約はテープ+割り印で安全策を
- 電子契約は効率化に有効だが、相手方の同意が不可欠
- 自社の文書管理規程や業界慣行に従うことも重要
9. まとめ
契約書に製本テープは「必須」ではありません。
大切なのは、改ざんできない証拠性をどう確保するかです。
- 紙の契約なら、A3両面印刷という効率化テクニックが使える
- 長文や重要契約では、従来どおり製本+割り印で安全性を確保
- 電子契約を導入すれば、さらなる効率化と証拠力の強化が可能
形式に縛られるのではなく、「目的に応じて最適な方法を選ぶ」視点を持つことが、契約実務をスマートに進めるカギとなります。

【音声解説】
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【執筆者】
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