ビジネス法務

【契約書のトリセツ】難しい言葉は無理に読まなくていいー契約書の文章が「途中でわからなくなる」方々のための条文の読み方のコツ

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1. 契約書って、どうしてこんなに読みにくいの?

契約書を開いた瞬間、
「うっ……」と手が止まってしまう。

そんな経験はありませんか。

文章は日本語なのに、
・一文が異様に長い
・途中にカッコが何個も出てくる
・読み終わったのに、何の話だったか分からない
・難しすぎて頭に入ってこない

これ、実はとても普通の反応です。
お恥ずかしながら、私自身も最初はまったく同じでした。

当時の私は、
「ちゃんと最後まで読めない自分が悪いんじゃないか」
「法務の仕事に向いてないのかもしれない」
そんなふうに感じていました。

でも、あるとき気づいたのです。

契約書は、
「読む人にやさしく理解してもらう」ことを第一目的にして書かれた文章ではない
ということ。

契約書の目的は、
あとから
「そんな意味だとは思わなかった」
「そうは書いてなかった」
という食い違いが起きないようにすることです。

だからこそ、
文章は長くなり、
条件や例外が細かく書き足され、
一文の中にたくさんの情報が詰め込まれています。

この前提に気づいてから、
私は契約書を「最初から全部理解しよう」として
読むのをやめました

すると、不思議なことに、
少しずつ「読める」ようになってきました。

すると、不思議なことに、
少しずつ「読める」ようになってきました。

言い換えれば、

「ここは自分に関係ある」
「これは相手の義務だ」
「この部分は、今すぐ理解しなくても大丈夫そうだ」

そんなふうに、
読むべきところと、今は飛ばしていいところを分けられるようになったのです。

契約書が読めなかったのは、
理解力や読解力が足りないわけではありません。

ただ、「読むときの前提」を知らないだけ。

この前提に気づくだけで、
契約書との向き合い方は、大きく変わります。


2. 契約書は「全部を理解しよう」としなくていい

最初に、いちばん大事なことをお伝えします。

契約書は、最初から最後まで完璧に理解しなくて大丈夫です。

まず見るべきなのは、たった3つ。

  • 誰が
  • 誰に
  • 何をする(または、何ができる)

この3点だけ拾う意識を持つと、
契約書の見え方がガラッと変わります。

なぜなら、契約書というのは、
結局のところ

「誰が、誰に対して、どんな約束をしているのか」

を書いた文書だからです。


3. 真面目な方ほど、全部読もうとして疲れてしまう

ここで、よくあるパターンをご紹介します。

「一字一句ちゃんと読まないと、
契約書を読んだことにならない気がする」

とても真面目で、責任感の強い方ほど、
この考え方にハマりがちです。

でも実は、
それが一番しんどく、そして非効率な読み方です。

契約書は、

  • 物語のように流れを楽しむ文章でもなく
  • 説明書のように順番通り理解する文章でもありません

必要なところを拾って読むことが、
最初から前提とされています。


4. なぜ契約書は、あえて長く・細かく書かれるのか?

契約書が長くて、
修飾語(条件の説明)が多いのは、
意地悪をしているからではありません。

理由は、とてもシンプルです。

👉 読む人によって意味がズレないようにするため

たとえば、

「甲は乙に対して、すぐに支払う」

と書いてあったら、どうでしょう。

  • 明日だと思う人
  • 数日後だと思う人
  • 余裕があるなら来月だと思う人

人によって、解釈がバラバラになります。

だから契約書では、

「甲は乙に対して、検収が完了した日から〇営業日以内に
銀行振込の方法により支払う」

というように、
条件を一つずつ足していきます。

文章は長くなりますが、
これは あとで揉めないための安全設計です。


5. まずは「骨組み」だけを拾ってみる

実際の条文を見てみましょう。

「甲は、乙に対し、本契約に基づき提供される業務の対価として、
検収完了後〇日以内に、代金を支払うものとする。」

初めから全部理解しようとしなくてOKです。

まずは、思い切って削ります。

  • 甲は
  • 乙に対して
  • 支払う

これだけで、

「誰が」「誰に」「何をするのか」

という 契約の骨組み は見えています。

細かい条件やカッコ書きは、
あとから必要になったときに戻れば十分です。


6. 今日からできる、3つの読み方ルール

最後に、今日から使える読み方をまとめます。

① カッコ( )は一回、飛ばす

カッコの中は、補足説明や例外ルールです。
まずは本文だけを最後まで読んでください。

②「できる」と「するものとする(しなければならない)」に注目する

  • 「〜できる」→ あなたの権利
  • 「〜するものとする(しなければならない)」→ あなたの義務

ここだけチェックするだけでも、
契約のバランスが見えてきます。

③ 全部わかろうとしない

契約書は、
「自分に関係あるところ」が分かれば十分です。


7. おわりに

契約書は結局のところ、
「誰が、誰に、何をする話なのか」
が、取引実務の流れに沿って、網羅的に書かれた書類です。

だからこそ、
最初からすべてを理解しようとする必要はありません。

まずは、
取引の流れの中でコアになる部分を確認する。
その意識を持つだけで十分です。

私自身も、
この考え方に切り替えてから、
契約書に対する苦手意識がなくなりました。

そして気がつけば、
契約書を読むことは「苦痛」ではなくなり、
楽しくなってきました。

契約書は、
正しく付き合えば、
みなさんにとっても必ず大きな武器になります。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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