ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1.夢の実現に、契約書は必要か?
- 2.契約書は、夢と事業の「解像度」を上げるツール
- 3.解像度が低い副業・起業の典型例
- 4.解像度が低いと、そもそも仕事は発生しない
- 5.ビジネスコンテストで見えた「解像度」の差
- 6.大きな夢ほど、解像度を上げる必要がある
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1.夢の実現に、契約書は必要か?
起業も視野に入れている。
やりたいことも、想いもある。
ただ、
- 何から手を付ければいいのか分からない
- 事業として説明しようとすると言葉に詰まる
- 誰かに話しても「で、何をやるの?」と聞き返される
- 自分の中でも、まだ輪郭がぼんやりしている
商工会議所などの支援機関で起業相談に対応していると、
まさにこの段階で、こんな質問を受けることがよくあります。
「契約書って、本当にこの段階で必要なんでしょうか?」
まだ売上も立っていない。
本格的な取引も始まっていない。
だからこそ、
「契約書の話をするのは、少し早い気がする」
そう感じるのは、とても自然なことです。
しかし実は、
この問いが出てくる“その前段階”こそが、
事業としての解像度を一段上げるタイミングでもあります。
2.契約書は、夢と事業の「解像度」を上げるツール
結論から言います。
夢を実現したいなら、契約書は必要です。
それは、契約書が
「トラブルを防ぐための紙」だからではありません。
契約書は、ビジネスの“解像度”を一段引き上げるツールだからです。
ここでいう「解像度」とは、
- 何を提供するのか
- どこまでが仕事なのか
- 何が成果物なのか
- いくらで、どんな条件なのか
- どこまで責任を負うのか
といった点が、
他人が判断できるレベルまで具体化されている状態を指します。
本人の中では分かっているつもりでも、
他人から見ると「ぼんやり」している。
それが、解像度が低い状態です。
契約書とは、
夢や構想や想いを「他人が評価できる形」に翻訳するツールともいえます。
3.解像度が低い副業・起業の典型例
起業支援の現場で、非常によく見かける状態があります。
- サービス内容の説明が毎回変わる
- 「ケースバイケースです」が多い
- 価格の理由を言語化できない
- 追加対応の範囲を自分でも把握していない
- 相手に合わせて話を変えてしまう
本人は真面目で、やる気もある。
ただ、事業として見ると解像度が低い。
この状態について、私は次のように整理しています。
契約書に落とし込めない段階では、
事業というより「個人の活動」や「趣味に近い形」で見られてしまうことが多い。
これは価値判断ではなく、
第三者評価の構造の話です。
4.解像度が低いと、そもそも仕事は発生しない
よくある誤解は、
「解像度が低いと、あとでトラブルになる」という話です。
それも事実ですが、
もっと手前に大きな問題があります。
解像度が低いビジネスは、そもそも仕事が発生しません。
なぜなら、顧客はこう考えるからです。
- 何を頼めばいいのか分からない
- どんな成果が得られるのか想像できない
- 価格が妥当か判断できない
- 責任の範囲が見えない
これは不信感ではなく、判断不能です。
判断できないものに、人はお金を払いません。
5.ビジネスコンテストで見えた「解像度」の差
私は以前、ビジネスコンテストの運営に関わっていました。
そこで強く感じたのが、次の点です。
- 解像度が高いプランは、非常に理解しやすい
- 将来像が具体的に描ける
- 審査する側が「顧客目線」で評価できる
逆に、
どれだけ熱量があっても、
解像度が低いプランは評価が伸びません。
もちろん、
ビジコンへの入賞=事業の成功ではありません。
一方、「起業後の顧客プレゼンのシミュレーション」と捉えると
少し視野が広がります。
審査員が見ているのは、
「この事業は、何を、どんな価値として、
どんな形で提供するのか」
これは、そのまま顧客の視点でもあります。
だからこそ、
契約書に落とし込めない=解像度が低い状態では、
ビジコンでも、顧客からも
「個人の活動」「趣味に近いもの」と見られてしまうのです。
ここで、少し補足として、私自身の話をさせてください。
私は、
祖父が経営者、父が会社員という家庭で育ちました。
起業を考え始めた頃、
当然のように身近な人に相談しましたが、
返ってくる言葉は、立場によってまったく違いました。
父からは、
「それで生活はどうするんだ」
「失敗したらどうする」
といった、生活を前提とした視点のアドバイス。
一方で、祖父からは、
「やるべきことをやって、地道に続けろ」
「花が咲くかどうかは後の話だ」
という、事業そのものに向き合う視点の言葉でした。
どちらが正しい・間違っているという話ではありません。
ただ、起業の前段階で本当に役に立ったのは、
間違いなく“事業視点”の言葉でした。
誰に相談するかによって、
事業の輪郭(=解像度)は、良くも悪くも大きく左右されます。
6.大きな夢ほど、解像度を上げる必要がある
ここまでの話を整理します。
- 契約書は「守るため」だけのものではない
- 契約書は、事業の解像度を引き上げるツール
- 解像度が低いと、そもそも評価や判断の土俵に乗らない
- ビジコンも顧客プレゼンも、評価軸は同じ
- 「どう見えるか」は、想い以上に結果を左右する
そして最後に。
大きな夢だからこそ、
その夢を“高解像度”で語れる状態にしておいていただきと思います。
解像度が上がった瞬間、
夢は「想い」から
「他人が判断し、選べる事業」に変わります。
契約書は、そのための
地味ですが、最も確実な第一歩です。

【音声解説】
本記事の内容は、
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【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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