ビジネス法務

【契約書のトリセツ】契約書はトラブルを防げない!取り交わしているのにトラブルが増えるわけ

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.契約書があるのに、なぜ揉めるのか?

「ちゃんと契約書は交わしているんです」
契約書作成の相談で、しばしば耳にする言葉です。

たしかに、
契約書がない状態より、
契約書がある状態の方が“安心”に見えます。

それなのに現実には、

  • 契約書があるのに揉める会社
  • 契約書を取り交わし始めてから、かえってトラブルが増えた会社

が、少なからず存在します。

一方で、

  • 契約書が簡素でも、ほとんど揉めない会社
  • トラブルが起きても、冷静に収束できる会社

もあります。

この差はいったいどこにあるのでしょうか。


2.契約書そのものに「予防力」はない

結論から言います。

契約書そのものには、
トラブルを予防する力はありません。

少し意外に聞こえるかもしれませんが、
これは20年以上実務を見続けてきた立場からの、率直な実感です。

契約書は、
「これを交わせば安心」という魔法の紙ではありません。

契約書は、
トラブルが起きたときにどう整理するか
どこで線を引くか
を、あらかじめ言語化したものにすぎません。


3.契約書があっても起きる“ズレ”

契約書には、たとえば次のようなことが書かれています。

  • どこからが不良品なのか(契約不適合責任)
  • 相手に損害を与えた場合、いくら賠償するのか(損害賠償)
  • 契約を破った場合、どの程度のペナルティがあるのか(違約金)
  • どんな場合に、契約を終わらせられるのか(契約解除)

つまり契約書とは、
トラブルが起きた後の「ルールブック」の側面もあります。

ところが現場では、

  • 「この程度なら問題ないと思っていた」
  • 「そこまで厳密に見るとは思わなかった」
  • 「前もこれで大丈夫だった」

といった感覚のズレが頻繁に起きます。

この時点で、
契約書があってもトラブルは避けられません。


4.契約書は「方法論の集合体」

ここが、このテーマの一番重要なポイントです。

契約書というのは、
単なる法的文章ではありません。

過去に起きた無数のトラブル、失敗、裁判、交渉の積み重ねから
「こうしておくと揉めにくい」という方法論を体系化したもの

それが契約書です。

たとえば、

  • なぜ「契約解除」という条項をわざわざ設けるのか
  • なぜ「損害賠償の範囲」を限定するのか
  • なぜ「違約金」を事前に決めるのか

これらはすべて、
先人たちが修羅場をくぐった結果、生まれた知恵です。

契約書とは、
トラブル回避のための方法論が詰まった設計図

だから本来は、
「読むもの」ではなく
「考えるための道具」であるはずなのです。


5.トラブルを防ぐのは「契約マインド」

トラブルが少ない会社には、共通点があります。

  • 契約書を「とりあえずの紙」にしていない
  • 契約条文を見たときに「これ、実務ではどう動くことになる?」と考えている
  • 分からないことを、そのままにしない
  • 契約と現場の動きを常に結びつけている

こうした契約マインドが、
日常の業務の中に根づいています。

逆に、

  • 契約書をコピペで流用する
  • 読まずにサインする
  • 現場と条文が乖離している

こうした状態では、
どんなに立派な契約書でも、
リスクの温床になります。

契約書は、
使いこなしてはじめて意味を持つ道具なのです。


6.“紙”より、“マインド”を磨く

契約書は、
トラブルを予防するための魔法ではありません。

契約書は、
トラブルを回避するための方法論が言語化されたものです。

トラブルが起こりにくい会社は、

  • 契約書が特別優れているのではなく
  • 契約書を理解し、使いこなす文化がある

というだけの違い。

日頃から契約リテラシーを磨き、
契約書を「考える道具」として使っていれば、
契約書は自然とビジネスの解像度を上げるツールになります。

そしてその解像度の高さこそが、
トラブルを未然に防ぎ、
ビジネスを前に進める力になります。

「契約マインドを社内に浸透させたいが、どう伝えればいいか分からない」

そんな声も、よく聞きます。

その場合、
社内研修・勉強会という形でのサポートも可能です。

契約条文の解説だけでなく、
「なぜこの条文があるのか」
「実務でどう考えればいいのか」
という“考え方の部分”から整理します。

お気軽にご相談ください。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。

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セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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