ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. はじめに:「え、今日来ないの…?」は珍しくない
- 2. ドタキャンの原因=依頼内容が「ふわっと」している
- 3. 主催者と出演者の“気持ちのズレ”がトラブルを招く
- 4. 「ふわっと」のままだとトラブルになりやすい5つのポイント
- 5. 契約書じゃなくてもOK!「注文書」や「LINEメッセージ」でも◎
- 📄【出演依頼確認書(注文書形式)ひな形】※紙用/ペライチ形式
- 💬【LINE・メッセージアプリで使える依頼文例】
- 6. 主催者内部でも①〜⑤の共有が重要!
- 7. まとめ:「ふわっと依頼」がトラブルを呼ぶ
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. はじめに:「え、今日来ないの…?」は珍しくない
地域イベント、講演会、ライブステージ、企業セミナー…。
出演者をブッキングして告知も終えた、さあ本番――と思ったら、
「すみません、やっぱり出られません」と当日キャンセル(あるいは連絡も無くドタキャン)。
こんな経験、イベント運営に関わったことがある方なら一度はあるのではないでしょうか?
イベント自体が“水モノ”である以上、多少の変更は仕方ありません。
しかし、明らかなドタキャンや事前の連絡不備は、運営側に大きな損害や信用失墜をもたらします。
その多くは、依頼内容が“ふわっと”していたことに根本原因があります。
2. ドタキャンの原因=依頼内容が「ふわっと」している
イベント出演依頼において、以下のような依頼の仕方はよく見かけます。
- 「出てもらえたら助かります!」
- 「軽くお話いただければ…」
- 「謝礼も、少しですがご用意します」
これは一見やわらかくて礼儀正しいように見えますが、
実は出演者側とのあいまいな関係性を放置している状態でもあります。
条件のすり合わせが不十分なまま依頼し、当日を迎える。
こうした“ふわっと依頼”は、出演者のドタキャンやトラブルの温床です。
3. 主催者と出演者の“気持ちのズレ”がトラブルを招く
さらに厄介なのが、主催者と出演者の“認識のズレ”です。
- 主催者:「場を提供してあげているつもり」
- 出演者:「頼まれたから(仕方なく)出てあげる」
こうした意識差が、事前に明文化されていない依頼であるほど大きくなります。
出演者が「ギャラも出ないし、無理してまで行く必要はない」と考えてしまえば、
当日ドタキャンにつながるのは時間の問題です。
4. 「ふわっと」のままだとトラブルになりやすい5つのポイント
出演者に依頼をする際は、以下の5点だけでも具体的に確認・共有しておくことが大切です。
①【日時・場所・内容】
→ いつ・どこで・何をしてもらうのか?を明確に。
- ×「来月のイベントで話してもらえますか?」
- ○「6月15日(日)14:00〜14:30、〇〇ホールでトークセッション(テーマ:〇〇)」
②【報酬と支払方法】
→ 出演料があるなら、金額・支払日・振込先まで明記。
- ×「謝礼は少しだけ出します」
- ○「出演料30,000円(税込)を出演日から7日以内にお振込」
③【キャンセル時の対応】
→ どちらかがキャンセルした場合の対応ルールを事前に確認。
- ×「急に出られなくても仕方ないですよね」
- ○「7日前以降のキャンセルは出演料の50%を違約金とさせていただきます」
④【遅刻・途中退席・遅延】
→ 出演途中でのトラブルや遅刻の扱いも明文化を。
- ×「遅れても問題ないと思ってた」
- ○「15分以上遅れた場合は“出演キャンセル”扱いとなることがあります」
⑤【著作権・撮影可否】
→ 撮影・録音・SNS利用など、使用可否の合意も忘れずに。
- ×「勝手に撮られてSNSに載ってた」
- ○「撮影・SNS投稿の可能性があることを事前にご了承いただく」
5. 契約書じゃなくてもOK!「注文書」や「LINEメッセージ」でも◎
「契約書なんて堅苦しいものはちょっと…」という主催者の方も多いでしょう。
でも安心してください。
“契約”としての効果は、紙の契約書でなくても発生します。
大事なのは「合意内容が確認できる形で残っている」こと。
つまり、LINEやメールでのやり取りでも、十分に証拠になります。
ただし、保存しておくこと(スクショ推奨)はお忘れなく。
📄【出演依頼確認書(注文書形式)ひな形】※紙用/ペライチ形式
🔶出演依頼確認書
出演者:〇〇〇〇 様
主催者:〇〇〇〇(イベント運営チーム)以下の内容で出演をお願い申し上げます。
● イベント名:〇〇フェス2025
● 日時・場所:2025年6月15日(日)14:00〜14:30 /〇〇ホール
● 出演内容:トークセッション(テーマ:〇〇)
● 出演料:30,000円(税込)※交通費込/出演後7日以内に振込
● キャンセル:出演者都合によるキャンセルは7日前以降、出演料の50%を違約金とします
● 遅刻対応:15分以上遅れた場合は出演放棄とみなす場合があります
● 撮影・掲載:当日の様子を写真・動画にて撮影し、SNS等で使用させていただく場合があります本内容にご同意いただける場合は、ご署名・ご返信をお願いいたします。
出演者署名:_______ 日付:_____
※【免責事項】本ひな形は一般的なものを参考までにご提供するものであり、特定の契約リスクを完全に防止することを保証するものではありません。実際の契約にあたっては、内容や規模に応じて専門家にご相談ください。
💬【LINE・メッセージアプリで使える依頼文例】
🔷出演依頼メッセージ例
〇〇さん
このたびのご出演、ありがとうございます!
以下の内容でお願いできればと思っています。ご確認のうえ「OKです」などご返信いただければ幸いです。・イベント名:〇〇フェス2025
・日時:6月15日(日)14:00〜14:30
・場所:〇〇ホール
・内容:トークセッション
・出演料:30,000円(税込・交通費込)
・支払方法:当日 or 後日振込
・キャンセル:7日前以降は50%の違約金が発生
・撮影可否:当日撮影・SNS使用の可能性あり※【免責事項】上記は一般的なものを参考までにご提供するものであり、特定の契約リスクを完全に防止することを保証するものではありません。実際の通知にあたっては、内容や規模に応じて専門家にご相談ください。
6. 主催者内部でも①〜⑤の共有が重要!
忘れがちなのが、主催者側の内部コミュニケーション不足によるトラブルです。
- イベント企画者と当日のアテンド担当が別
- 条件が主催者内で共有されていない
- 出演者に何をお願いしたかが分からない
このようなケースでは、出演者と合意していても、運営側で混乱が生じます。
したがって、出演者との確認だけでなく、主催者内で①〜⑤の情報共有をしっかり行うことも、
トラブル回避において非常に重要です。
7. まとめ:「ふわっと依頼」がトラブルを呼ぶ
最後に改めてまとめます。
- ドタキャンの多くは“ふわっと依頼”が原因
- 出演内容・報酬・キャンセル対応などは最低限確認・明文化
- 契約書が難しければ、注文書やLINEでもOK
- 主催者内の情報共有もトラブル防止のカギ
- 書面化=信頼がない、ではなく「信頼を守る」ための手段

【音声解説】
本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。











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