ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. はじめに
契約相手が突然感情的になり、
「もうそんな契約知らない!」
と言い出す——。
ビジネスの現場では、こうした“感情トラブル”は珍しくありません。
どれだけ良い契約書でも、実際に動くのは人間。
だからこそ、感情に巻き込まれない契約設計がとても重要です。
本記事では、相手が感情的になって契約どおり進まないときに備えるための
「契約書で作る4つの仕組み」と「協議条項による初期消火」について解説します。
2.感情はルールを越えてくる
人間関係がこじれると、
- 言った・言わない
- やる気の変化
- 誤解の積み重ね
で、契約どおり進まなくなります。
これは能力不足ではなく、感情の衝突が原因です。
契約の世界では「合意内容」がすべてなので、
感情を沈める“仕組み”を事前に作っておくことが大切です。
3.感情に巻き込まれない契約の設計
(1)解除条項を“冷静な出口”として設ける
感情が荒れている相手を説得し続けるのは現実的ではありません。
そんなときに必要なのが「一定の事由で契約を終了できる条項」です。
第○条(契約の解除)
甲または乙は、相手方が本契約の目的に反する行為を行い、書面または電子メール等により通知した上で、相当期間を定めて是正を求めても改善が見られないときは、本契約を解除できるものとする。
ポイント
- 証拠性のある通知手段を入れておく
- 是正期間を設けることで適法性も確保
- 感情に巻き込まれず“出口”に進める
(2)契約期間は「短期更新」または「試用期間型」に
関係の変化が読めない相手とは、長期契約はリスクです。
- 初回3か月契約
- 双方の合意更新(自動更新にしない)
- 試用期間を設けて相性を確認
中間レビューを入れるとさらに良い。
→ 温度感を確かめてから次に進めるため、感情トラブルの抑制に効果大。
(3)業務内容は“揺れない粒度”で書く
抽象的な「支援」「サポート」は誤解の温床。
「月2回のミーティング出席」
「SNS投稿文の草稿作成」
「納期●日以内の修正対応」
このように、誰が見ても同じ解釈になる表現にします。
これだけで「そんなつもりじゃなかった」を大幅に減らせます。
(4)報告義務・報告会の開催を明文化する
感情トラブルの多くは、コミュニケーション不足によって起きます。
第○条(報告及び協議)
乙は、業務の進捗状況について毎月1回、甲に報告するものとする。
甲および乙は、必要に応じて協議の場(オンライン会議を含む)を設け、業務の円滑な遂行に努めるものとする。
これにより、
- 温度感のズレ
- 早期の不満
- 誤解
を事前にキャッチできます。
(5)協議条項で“初期消火”する
感情トラブルが起きた直後に、一度冷静にテーブルにつく仕組みを用意します。
第○条(協議)
甲および乙は、本契約の解釈に疑義が生じた場合、誠実に協議し、解決を図るものとする。
「いきなり解除」ではなく「一度協議」という段階を挟むことで、
トラブルを初期段階で沈めることができます。
4.冷静な出口が関係を守る
感情的になった相手に対し、話し合いで何とかしようとすると
炎上が拡大することがあります。
契約書に“冷静な出口”があれば、
理性のルートで関係整理ができ、
お互いのダメージを最小限にできます。
5.まとめ
契約は「信頼を示す紙」ではなく、
**感情の揺れから双方を守る“構造”**です。
- 解除条項:冷静な出口
- 契約期間:自然に距離を作れる
- 業務内容:誤解を防ぐ
- 報告義務:温度感を保つ
- 協議条項:初期消火の仕組み
感情は止められません。
でも、契約で“揺れに強い”仕組みを作ることはできます。
これが、感情トラブルに負けない契約運用のコツです。

【音声解説】
本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
【ご質問受付中】
「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。
また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










この記事へのコメントはありません。