ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. 契約書の日付は「元号」か「西暦」か
- 2. 法律上はどちらでも問題ない
- 3. 元号を定めている法律「元号法」
- 4. 契約書の目的は「事実の凍結保存」
- 5. 実務では西暦が多い理由
- 6. 実務のリアル:「平成40年問題」
- 7. 問題は契約の効力ではなく「管理」
- 8. 実務の鉄則:表記は必ず統一する
- 9. まとめ
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. 契約書の日付は「元号」か「西暦」か
契約書の作成やレビューのご相談を受けていると、意外とよく聞かれる質問があります。
それが、
契約書の日付は
元号で書くべき?
それとも 西暦で書くべき?
というものです。
一見すると細かい話のようですが、契約書という文書の役割を考えると、
実務上それなりに意味のあるテーマでもあります。
今日はこのテーマについて、
- 法律上の扱い
- 実務で多い書き方
- 元号変更に関する実務のリアル
といった点を含めて解説してみたいと思います。
※本記事は 2026年時点の契約実務 を前提に解説しています。
2. 法律上はどちらでも問題ない
結論から言うと、
元号でも西暦でも問題ありません。
契約書の日付が
- 令和8年4月1日
- 2026年4月1日
どちらであっても、契約の効力に違いはありません。
その理由は、
契約自由の原則
という考え方にあります。
契約自由の原則とは、
当事者同士が合意している限り、
契約内容は自由に決めることができる
という原則です。
したがって、
- 元号で書くか
- 西暦で書くか
という点についても、法律が細かく決めているわけではありません。
3. 元号を定めている法律「元号法」
日本には 元号法 という法律があります(昭和54年6月12日施行)。
この法律は非常にシンプルで、条文はわずか2つしかありません。
元号法
第1条 元号は、政令で定める。
第2条 元号は、皇位の継承があった場合に限り改める。
つまりこの法律は、
- 元号をどのように決めるのか
- 元号がいつ変わるのか
を定めているだけです。
この法律のどこにも(他の法律も含めて)
- 契約書では元号を使いなさい
- 民間文書は元号で書きなさい
という規定はありません。
したがって、契約書の日付表記は当事者の判断で決めてよい
ということになります。
4. 契約書の目的は「事実の凍結保存」
ここで契約書の役割を改めて整理してみましょう。
契約書の目的は大きく分けて二つあります。
一つは、
事実関係を正確に記録すること
です。
たとえば、
- 契約締結日
- 契約開始日
- 契約期間
- 支払期限
といった事実を、文書として明確に残します。
もう一つは、
後日疑義が生じないようにすること
です。
契約書は、
商談で合意した内容を文書として固定する
という役割を持っています。
言い換えると、商談内容の凍結保存とも言えるでしょう。
だからこそ、
- 誤解が起きない
- 読み間違いが起きない
- 記載ミスがない
ということが重要になります。
日付の表記も、この観点から考える必要があります。
5. 実務では西暦が多い理由
法律上はどちらでも良い。
では実務ではどうでしょうか。
私の経験では、ビジネス契約書では
西暦が使われているケースが圧倒的に多い
と感じています。
特に
- IT企業
- スタートアップ
- BtoB契約
- 国際取引
などでは、西暦が一般的です。
理由はとてもシンプルです。
実務で扱いやすいからです。
多くの方は、
- カレンダー
- スケジュール
- システム
を西暦で管理しています。
そのため、元号よりも西暦の方が直感的に理解しやすいのです。
6. 実務のリアル:「平成40年問題」
平成は
平成31年4月30日
で終了しました。
そのため、平成40年という年は存在しません。
ところが、長期契約や自動更新契約では、
契約期間:平成40年3月31日まで
と書かれた契約書がそのまま残っているケースを見かけることがあります。
ではこの契約書は無効なのでしょうか。
結論から言うと、
直ちに契約が無効になるとは通常考えにくいとされています。
契約当事者の合理的な意思解釈によって、
令和の年号として読み替えられる可能性が高いと考えられます。
7. 問題は契約の効力ではなく「管理」
平成40年と書かれていても、契約が直ちに無効になるとは通常考えにくいとされています。
しかし実務上は少し困ることがあります。
それは、契約管理です。
契約更新のチェックをするとき、
- 契約台帳
- 契約管理システム
- 更新通知
などを確認します。
このとき、「平成40年」と書かれていると、一瞬で理解できないことがあります。
その結果、
- 更新忘れ
- 契約期限の誤認
といったミスにつながる可能性があります。
これも、私が実務上西暦をおすすめする理由の一つです。
8. 実務の鉄則:表記は必ず統一する
もう一つ、実務でよく見かける問題があります。
それが表記ゆれです。
例えば、契約書の本文では
令和8年4月1日
と書いてあるのに、署名欄では
2026年4月1日
と西暦になっているケースです。
法律上は問題ありませんが、契約書としてはあまり美しい文書とは言えません。
契約書はビジネス文書でもあります。
そのため、
- 表記の統一
- 文書の整合性
- 読みやすさ
が重要です。
元号でも西暦でも構いませんが、1つの契約書の中では必ず統一する
これが実務の基本です。
9. まとめ
契約書の日付は
- 元号でも
- 西暦でも
法律上はどちらでも問題ありません。
しかし契約書の目的は
- 事実を正確に記録すること
- 後日疑義が生じないようにすること
です。
そう考えると、
- 日常的に使っている
- 元号変更の影響を受けない
- 契約管理がしやすい
という理由から、西暦を使う方が実務的と言えるでしょう。
契約書というのは、法律論だけでなく
実務のリアル もとても重要です。
このブログでは、契約書の専門家として契約書で損をしないための実務知識
を分かりやすくお伝えしていきます。
もし契約書に関する疑問があれば、ぜひお気軽にお寄せください。

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【執筆者】
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