ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. 「良い専門家とは何か」を考えるようになったきっかけ
- 2.「良い専門家」って、結局どういう人?
- 3.「オーダーを作ってくれる専門家」が、良い専門家
- 4.専門家が困る「ふわっとした依頼」
- 5. 具体的なオーダーがあると、仕事は一気に変わる
- 6.「良い専門家」と「良い相談」はセットである
- 7.「良い相談」は、完璧である必要はない
- 8.まとめ:専門家は「使いこなして、初めて価値が出る」
- 9. おわりに:私自身も、まだ「良い専門家」への途中です
1. 「良い専門家とは何か」を考えるようになったきっかけ
「良い専門家を紹介してもらえませんか?」
仕事をしていると、
お客様からこうした相談を受けることが少なくありません。
契約書の相談に限らず、
弁護士、税理士、社労士、IT、デザイン、コンサルタント……
分野は違っても、「誰に頼めばいいのかわからない」という悩みは共通しています。
一方で、私自身も行政書士として仕事をする中で、
お客様からご指導をいただくことが何度もありました。
「その説明、もっと早く聞きたかった」
「そこまで考えてくれると思っていなかった」
「専門家って、そういう役割なんですね」
こうした言葉に、
ハッとさせられる場面は一度や二度ではありません。
また逆に、
私のもとに来た相談の中で、
「これは私より、別の専門家が適任だな」
そう感じて、
他の専門家をご紹介する立場になることもあります。
そのときに強く意識するのが、
- その方は「説明してくれるか」
- オーダーをそのまま受けるだけの方ではないか
- お客様の状況を一緒に整理してくれる方か
という点です。
私は、
- 客として専門家に「頼む側」
- 専門家として「使われる側」
- さらに、他の専門家を「紹介する側」
この三つの立場を、
日常的に行き来しています。
その経験を通じて、
少しずつですが、
「良い専門家とは何か」が自分なりに見えてきました。
この記事では、
そうした実体験を踏まえながら、
- 良い専門家とはどんな人なのか
- なぜ相談がうまくいくケースと、そうでないケースがあるのか
- 専門家と上手に付き合うための考え方
を、できるだけわかりやすく整理してみたいと思います。
2.「良い専門家」って、結局どういう人?
「良い専門家を紹介してください」
この言葉の裏には、
さまざまな本音が隠れています。
- 失敗したくない
- 高いお金を払って後悔したくない
- よく分からない世界だから、信頼できる人に任せたい
もっと言えば、
「自分では判断できないから、誰かに判断してほしい」
という気持ちもあるのだと思います。
では、その「良い専門家」とは、
一体どういう存在なのでしょうか。
3.「オーダーを作ってくれる専門家」が、良い専門家
私の結論は、かなりシンプルです。
良い専門家とは、
オーダーをそのまま受ける人ではなく、
オーダーを“整理し、翻訳し、提案してくれる人”
です。
多くの人は、
- 何を頼めばいいのか分からない
- どこまで頼んでいいのか分からない
- 自分の課題を言語化できていない
そんな状態で専門家のもとを訪れます。
そのときに、
「具体的に何をやってほしいんですか?」
とだけ聞かれてしまうと、
相談はそこで止まってしまいます。
一方で、
- 今の状況はこういう理解で合っていますか
- 本当は、ここが一番困っていませんか
- それを解決するなら、こういうやり方があります
と、考え方ごと提示してくれる専門家は、
それだけで信頼に値します。
4.専門家が困る「ふわっとした依頼」
ここで、
少し専門家側の本音をお話しします。
私たち専門家にとって、
一番困る依頼の仕方があります。
それは、
「まあ、適当にやっておいてください」
というオーダーです。
たとえば、
業務委託契約書の作成を依頼される場合。
「一般的なひな形でいいから」
「細かいことは任せるから」
「とりあえず形だけ整えてほしい」
こうした言葉をかけられることがあります。
ですが正直に言うと、これは一番やりづらい。
なぜなら、
契約書は「形式」ではなく、
ビジネスの設計図だからです。
5. 具体的なオーダーがあると、仕事は一気に変わる
一方で、
こんな依頼をいただくとどうでしょう。
- 事前に仕様を固める取引が多い
- 納期は必ず明確にしたい
- 月額報酬は固定で、業務範囲を超えたら追加料金を取りたい
- 相場より安く受けている分、免責は広めにしたい
- 高額な損害賠償は現実的に払えない
こうした背景や考え方まで伝えていただけると、
契約書は一気に「作りやすく」なります。
これは契約書に限らず、
- 建設業許可
- 産業廃棄物許可
- 宅建業許可
といった許認可業務でも同じです。
6.「良い専門家」と「良い相談」はセットである
ここで視点を変えてみましょう。
「良い専門家」を探す前に、
なぜ相談がうまくいかないことがあるのか。
その原因の多くは、
- 専門家が悪い
- 相談者が悪い
という単純な話ではありません。
実際には、
オーダーが存在していない
ことがほとんどです。
ご相談者は、
「どう相談していいかわからない」。
専門家は、
「何を求められているかわからない」。
このズレが、
「話が噛み合わない」という結果を生みます。
だからこそ、
オーダーを一緒に作ることが重要になります。
7.「良い相談」は、完璧である必要はない
では、
どんな相談をすればいいのでしょうか。
結論から言えば、
完璧なオーダーは必要ありません。
必要なのは、
「解決したいこと」を伝えることです。
契約書に関することでたとえば、こんな感じです。
「顧客トラブルが多い」
「裁判になるほどではないが、現場とお客様の認識がズレる」
「書面で決めていないことが原因だと思う」
これを何とかしたい!
雑駁とでもこの程度まで言語化していただければ、
専門家はかなり精度の高い提案ができます。
- 契約書が必要か
- 中身(ボリューム)はどの程度がよいか
- 説明書や確認書を併用すべきか
最終成果物の全体像がかなりの解像度でもって言語化でき、
ご相談者と共有できるからです。
8.まとめ:専門家は「使いこなして、初めて価値が出る」
専門家は、
丸投げする存在ではありません。
同時に、
全部わかってから頼む存在でもありません。
- 課題を投げる
- 整理して返してもらう
- 判断する
このキャッチボールができたとき、
専門家は本来の力を発揮します。
良い専門家とは、
- 提案してくれる人
- 説明してくれる人
- 判断材料を出してくれる人
そして、
使いこなされることを前提にしている人です。
9. おわりに:私自身も、まだ「良い専門家」への途中です
ここまで、
「良い専門家とは何か」について、
私なりの考えをお話ししてきました。
もっとも、
こうした話をしている私自身が、
すでに「良い専門家」であるかと言われれば、
決してそんなことはありません。
お客様からの一言で気づかされることもありますし、
反省する場面も、日々あります。
だからこそ、
- もっとわかりやすく説明できないか
- 本当に必要な提案になっているか
- 判断材料をきちんと出せているか
そうしたことを常に考えながら、
少しずつでも前に進んでいくしかないのだと思っています。
専門家は、
「完璧な答えを出す存在」ではなく、
一緒に考え、整理し、判断を支える存在なのかもしれません。
私自身も、
そんな専門家であり続けられるよう、
これからも日々研鑽していきたいと思います。

【音声解説】
本記事の内容は、
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【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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