ビジネス法務

【契約書のトリセツ】フリー素材って本当に“自由”?~ 著作権と利用規約~

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1. はじめに

「この画像、ネットにあったから使ってもいいですよね?」

そんな感覚で“フリー素材”を使った結果、
後から削除要請や損害賠償の通知が届いてしまう――
そんなトラブルが、実は少なくありません。

本記事では、フリー素材に潜む「契約リスク」や「著作権侵害の構造」をわかりやすく解説します。


2. フリー素材=“誰でも自由に使えるもの”?

近年、Web制作や広告、社内資料などでフリー素材(無料素材)が多く使われるようになりました。
「商用利用OK」「会員登録不要」「クレジット不要」といった文言が並ぶと、つい油断してしまいます。

しかし実際には、

  • 利用条件を満たしていなかった
  • 出典リンクを貼っていなかった
  • 加工してはいけない素材を編集してしまった

…など、利用規約の違反によって損害賠償を請求されるケースも。

こうしたトラブルは、実は「契約」に関する感覚のズレから起きているのです。


3. 法律上の考え方~そもそも「権利」とは?

法律における「権利」とは、

他人に対して「こうしてほしい」と主張できる法的な力のこと。

たとえば──

  • 他人が自宅に勝手に入ってきたら、「出ていけ」と言える(所有権)
  • 自分が作ったイラストを無断で使われたら、「使うな」と言える(著作権)

このように、権利者には他人の使用を止めたり、使用料を請求したりする力があります。

そして、**この正当な力を無視して行動することが「権利侵害」**です。


4. 著作権侵害は“無断入居”と同じ?

よく、「不動産を無断で使う人はいないけど、著作物は無断で使われがち」と言われます。

これはなぜか?

  • 不動産は物理的に“目に見える”
  • 著作物はデジタルで簡単にコピーできてしまう
  • 「フリー素材」という言葉が「自由」を連想させやすい

こうした要因から、著作物の“所有者がいる”という意識が薄れがちです。

しかし著作権も、「勝手に使わせない」排他性を持つ権利です。
しかも、創作した瞬間に自動的に発生するという特徴があります(著作権法17条、18条など)。


5. 実務上の注意点~フリー素材=フリーレント物件?

契約の構造として、フリー素材を「フリーレントの不動産」にたとえるとわかりやすくなります。

比較項目フリー素材フリーレント物件
所有者がいるかいる(著作権者)いる(オーナー)
無償利用の条件利用規約に明記契約書に記載
使っていい範囲商用/非商用、改変可否など用途・入居期間など
契約違反のリスク削除要請・損害賠償契約解除・退去要請・損害賠償

つまり、フリー素材も“貸してもらっているだけ”なのです。
借りるならルールを守る。
これが法律上の基本です。


5.トラブルを防ぐコツ~利用規約の「4つのチェックポイント」

素材を使う前に、次の4つは最低限チェックしましょう:

  1. 商用利用がOKか?
     → 会社HP・広告・販促資料で使う場合は要確認!
  2. 改変(加工)がOKか?
     → 画像のトリミング・色調補正・文字入れなど
  3. クレジット表記が必要か?
     → 表記が義務づけられている場合、忘れるとNG
  4. 出典リンクの指定があるか?
     → サイトへのリンクが必須のケースもあります

おすすめ:利用規約のスクリーンショットを保存しておく
あとで「規約が変わった」と言われても、自分の利用時点での証拠があれば安心です。


6. まとめ

「フリー素材」とは、誰でも勝手に使ってよいものではありません。
あくまで「条件つきでの使用を許可された著作物」です。

そしてその条件は、著作権者が設定した「契約(利用規約)」によって定められています。

📌「無料=自由」ではない。
📌「使わせてもらっている」という意識が大切。
📌 契約の基本は「ルールを守って借りる」こと。


【音声解説】

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▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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