ビジネス法務

【契約書のトリセツ】契約書は「作ること」より「保管」が重要!トラブル時に役立つ契約管理の実務

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.契約書を締結したあと、どう管理されていますか?

企業における契約締結の流れは、一般的に次のようになります。

① 取引先の選定
② 条件交渉
③ 社内決裁
④ 契約書締結
⑤ 契約書保管

多くの企業では、①〜④には多くの時間と労力をかけています。

契約書レビュー、条文修正、条件調整、社内稟議などです。
ところが最後の 「契約書の保管」 になると、急に管理が曖昧になることが少なくありません。

例えば次のようなケースです。

・担当者が机に保管
・部署ごとに管理
・共有フォルダのどこか

こうした状態でも、普段は問題ありません。
しかし問題が起きるのは トラブルが発生したとき です。


2.契約書は「ネガティブな状況」で突然主役に躍り出る

契約書が最も活躍するのは、次のような場面です。

・取引条件を巡って揉めている
・契約解釈が食い違っている
・トラブル寸前
・紛争状態

つまり ネガティブな状況のとき です。
その時に必要なのは「当時、何を約束していたのか」という事実です。
そしてその事実を示すのが 契約書 です。

しかしその契約書が「どこにあるか分からない」となってしまうと、問題はさらに複雑になります。

実務の経験から言うと、企業間トラブルの多くは契約書を確認すれば整理できるケースです。

ところが契約書が見つからないと、

・記憶
・推測
・感情

で議論することになります。
これは非常に危険です。


3.契約書が見つからない会社

契約書管理が曖昧な企業では、次のような会話がよく起こります。

「契約書にはこう書いてあったはず」
「いや、そんな条項はなかったと思う」
「担当の○○さんが持っていたはず」
「その○○さんはもう退職しました」

結果として契約書ではなく“記憶”で議論することになります。

しかし記憶は非常に曖昧です。
3日前のランチに何を食べたか即座に思い出せるでしょうか?
一週間前の夕食を明確に思い出せるでしょうか?
人の記憶とはこのようなものです。 

その結果、本来なら簡単に整理できる問題が大きな紛争に発展してしまう
ケースも少なくありません。


4. 最近増えている契約書トラブル

■紙と電子契約の混在

近年急増している問題が 契約書の保管場所の分断 です。

例えば

A社:紙契約
B社:電子契約
C社:PDF
D社:担当者PC

このように 保管方法がバラバラ になっています。

その結果、
「紙の契約書はキャビネット」
「電子契約はクラウド」
「PDFは共有フォルダ」
といった状態になります。

この状況でトラブルが起きると、契約書を探すだけで数時間ということもあり得ます。


5.契約書は「取引のルールブック」

契約書とは何か。それは 取引のルールブック です。

例えば、
・価格
・支払条件
・納期
・責任範囲
・損害賠償
・契約期間
・解約条件
こうしたルールを整理したものです。

つまり契約書は ビジネスの設計図 でもあります。

そしてトラブル時に最も重要になるのは 契約書の原本 です。

紛争になった場合、証拠として強い力を持つのは両者のハンコが押された契約書の原本 です。
電子契約の場合は 電子署名付きデータ です。

せっかく時間をかけて契約交渉をしても、原本が提示できなければ
その努力は意味を失う可能性があります。
だからこそ 原本の管理 が重要になります。


6.契約書管理の実務ルール

企業が整備すべき契約管理の基本は次の通りです。

まず契約書は 管理部門で一元管理する ことです。
各部署任せにしないこと です。

おすすめは

・総務
・法務
・管理部門

などによる 全社一元管理 です。

■契約台帳を作る

契約台帳はExcelでも十分です。

最低限次の項目は必要です。

・取引先
・契約名称
・契約開始日
・契約終了日

さらに

・自動更新
・更新期限

も管理するとより安全です。

■契約期限の管理

特に重要なのが 契約終了日 です。

例えば

・フランチャイズ契約
・代理店契約
・ライセンス契約

これらは契約が終了しているのにビジネスを続けてしまうと重大な契約違反になってしまいます。
そのため 契約期限のアラート が重要です。

■契約書の保存期間

契約書の保存期間は、法律で一律に定められているわけではありません。

なお、参考情報として、
・会社法:帳簿書類10年
・税法:帳簿書類7年
といった保存義務期間があります。

契約書そのものに直接適用される規定ではありませんが、
契約に関する取引記録や証拠としての性質を考えると、これらの保存期間は一つの目安になります。

そのため実務では、「契約終了後10年程度は保存する」
という社内ルールを採用している企業も多いようです。

■継続取引契約は永久保存

さらに重要な視点があります。
それは 基幹契約の永久保存 です。

例えば
・取引基本契約
・代理店契約
・フランチャイズ契約
・ライセンス契約

これらは 会社のビジネスモデルそのもの です。
つまり 会社の歴史 と言ってもよいでしょう。

実務では、こうした契約書を 永久保存 としている企業も多くあります。


7.契約書は企業の「経営インフラ」

契約書というと
・条文
・契約交渉
に目が向きがちです。

しかし実務では契約書管理こそリスク管理の基礎です。
契約書はトラブルが起きたときに企業を守る最も重要な証拠 だからです。

そして継続取引契約は 企業の歴史そのもの でもあります。

契約書とは 締結の瞬間だけのものではありません。
・契約期間中も
・契約終了後も
企業を守り続ける 経営インフラ です。

契約書とは 取引の解像度を上げるツール。
そしてその価値は適切な管理体制によって初めて発揮されうる のです。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
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セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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