ビジネス法務

【NDAのトリセツ】名刺代わりにハンコを押して大丈夫?NDA(秘密保持契約書)で必ず確認すべき3つのポイント

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.NDAって、そんなに身近な言葉でしたっけ?

毎朝、私はFM放送の朝の番組を聞いています。
全国ネットのキー局の番組で、その日のニュースを解説するコーナーがあるのですが、
先日、少し印象的な場面がありました。

ニュース解説の流れの中で、解説役の方がごく自然に
こうしたケースでは、NDAを結ばないといけないのではないか
といった趣旨のコメントをされていたのです。

私が「おっ」と思ったのは、新聞や専門メディアだけでなく、
ラジオという一般向けメディアの中で、
「NDA」という言葉が、何の説明もなく使われていたという点でした。


2.NDAは、もう一般的なビジネス用語になりつつある

NDA
Non-Disclosure Agreement、日本語では「秘密保持契約書」。

ちなみに、ここでよく聞かれるのが
「秘密」と「機密って、何が違うんですか?」という質問です。

一般的な日本語の感覚では、

  • 秘密:外に出してはいけない情報
  • 機密:特に重要度が高く、厳重に管理すべき情報

といったニュアンスの違いで使われることが多いと思います。

ただし、NDAの文脈では、この違いをそこまで厳密に区別する場面は多くありません。
NDAでは「秘密情報」「機密情報」といった言葉が使われますが、実務上は、

その契約書の中で、どう定義されているか

がすべてです。

定義条文で
「本契約において秘密情報とは〜をいう」
と書かれていれば、その内容がルールになります。

そのため、NDA実務では
「秘密」と「機密」は、定義次第ではほぼ同義として扱われる
と理解しておけば、大きなズレはありません。

話を戻します。

この「NDA」という言葉は、
もともとビジネス法務や契約実務に携わる人間が日常的に使う専門用語でした。

それが今では、

  • 新聞
  • テレビやラジオのニュース解説
  • 経営者同士の会話

といった場面でも、
「秘密保持契約書」と言い換えられることなく、
「NDA」という略語のまま使われるようになってきています。

つまり、NDAはすでに
一部のマニアックな契約書ではなく、
社会全体に浸透し始めている契約書だということです。


3.「名刺代わりだから大丈夫」と思ってしまう

NDAが身近になったことで、
実務の現場ではこんな声もよく聞くようになりました。

  • 「とりあえずNDAを結びましょう」
  • 「名刺代わりみたいなものですよね」
  • 「お金の話は書いてないし、大丈夫ですよね」

確かに、NDAは多くの場合、

  • 本取引の前
  • 引き合い・情報交換の段階

で締結されます。

そのため、契約書の中に
金額や報酬といった“お金の条項”が書かれていないことがほとんどです。

ここでつい、
「重要度が低い契約書」
だと勘違いしてしまう方が少なくありません。


4.NDAは「情報」と「行動」を縛る契約

NDAの本質は、
秘密を守ることにあります。

もう少し具体的に言うと、

  • 何を秘密情報とするのか
  • いつまで秘密として扱うのか
  • その情報を使って何をしてよくて、何をしてはいけないのか

これらを定める契約書です。

つまり、NDAは
お金を縛らない代わりに、情報と行動を縛る契約書

だからこそ、
内容次第では、事業の自由度や将来の選択肢に
思いのほか大きな影響を与えることがあります。


5.NDAで必ず確認すべき3つのポイント

① 期間:「いつまで守るのか?」

まず最初に確認したいのが、秘密保持の期間です。

単発の打ち合わせや、
一度きりの検討案件にもかかわらず、

  • 自動更新
  • 半永久的な秘密保持

になっているNDAも、実際に存在します。

情報には「寿命」があります。
すでに無価値になった情報まで、永遠に守り続ける必要はありません。

秘密情報が価値を持つ期間を想定し、
合理的な期間設定になっているかを確認しましょう。

② 変な縛り:秘密保持と関係ない制限はないか?

NDAの目的は、あくまで秘密保持です。

それにもかかわらず、

  • 他社との交渉禁止
  • 同業他社との接触制限
  • 取引不成立後も続く行動制限

といった条項が含まれているケースがあります。

引き合い段階では、
将来の展開は誰にも分かりません。

秘密保持と無関係な「縛り」が入っていないか
ここは必ずチェックしたいポイントです。

③ 権利関係:一方的に不利な設計になっていないか?

最後に重要なのが、権利関係です。

自社の情報をもとに、
相手がノウハウや成果物を生み出した場合、

それらがすべて
「一切合切、相手に帰属する」
という設計になっていないか。

こうした内容は、実務上、アンバランスになりやすい設計と言えます。

将来、どのような成果が生まれるかは分かりません。
だからこそ、
最低限、一方的に不利にならない、イーブン(公平)な権利設計
になっているかを確認する必要があります。


6.NDAは「メジャーな」契約書

NDAは、

  • 形式的な契約
  • 名刺代わりの書類

ではありません。

むしろ、

  • 自社の情報
  • 事業の自由
  • 将来の選択肢

を守るための、最初の防波堤です。

「期間」「縛り」「権利関係」。
この3点を意識するだけでも、
防げるトラブルは確実に増えます。

NDAが社会に広く浸透してきた今だからこそ、
“なんとなく締結する契約書”から卒業する
その一歩として、ぜひ意識してみてください。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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