ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. 「協議したい」と思った時点で見えてくること
- 2. 「協議したい」=今の条件に不満があるサイン
- 3. 法的な問題ではなく、ビジネスの打ち手を考えるべき
- 4. 「協議に応じない」=経営判断の材料になる
- 5. 「契約違反か?」ではなく「割に合うか?」で考える
- 6. 経営的な打ち手を考える
- 7. より踏み込んで定めることは可能だが…
- 8. 協議条項は「経営判断のシグナル」として使う
- 🔎 参考記事
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. 「協議したい」と思った時点で見えてくること
業務委託や顧問契約など、更新が必要な契約書には、よくこう書かれています。
「本契約の更新については、期間満了の30日前までに、甲乙協議のうえ決定するものとする。」
この条文を見て、
- 更新前に話し合えるはず
- 条件を見直すチャンスがある
- 少なくとも、打ち合わせくらいはできるだろう
そう思うのは自然です。
ところが実際には、
「変更点はありませんので、現行条件で更新します。」
メール1通で終わり、協議の場はなし。
「え、協議って書いてあるのに…?」
「これ、契約違反じゃないの?」
そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ここで考えてほしいのは、
「なぜ協議したいと思ったのか?」ということです。
2. 「協議したい」=今の条件に不満があるサイン
まず、協議を求めた背景を考えてみましょう。
ほとんどの場合、
「協議したい」と思うのは、
現状の契約条件に何らかの不満や懸念があるからです。
- 業務量が増えている
- 負担が偏っている気がする
- このままでは割に合わない
そう感じたからこそ、
「一度話したい」と思ったはずです。
つまり、協議を求めた時点で、
経営的には「何か変えたい」というサインが出ているといえます。
3. 法的な問題ではなく、ビジネスの打ち手を考えるべき
法的な結論はシンプルです。
契約書に「協議するものとする」と書いてあっても、
更新時に協議が行われなかったからといって、
それだけで契約違反になる可能性は低い。
しかし、もっと大事なのはここからです。
法的にどうこうよりも、
今の条件でこのまま続けるべきか、
経営的な打ち手を考えるタイミングだということです。
4. 「協議に応じない」=経営判断の材料になる
協議に応じないからといって、
必ずしも相手が悪いわけではありません。
- 単に手間をかけたくない
- 現状維持で十分だと思っている
- 交渉が面倒なだけかもしれない
それでも、
「こちらが話し合いを求めているのに応じない」
という事実は、重要なシグナルです。
このシグナルをどう受け止めるか。
- この取引は今の条件で続ける価値があるか?
- 相手との関係性は、今後も健全か?
- 他により良い条件で付き合える先はないか?
法的に戦うより先に、
経営として次の一手を考える材料にするべきであるケースが多いように感じます。
5. 「契約違反か?」ではなく「割に合うか?」で考える
ここで視点を切り替えましょう。
- 法的にどうこう
- 契約違反かどうか
これはあくまで手段の話。
本質的には、
- 今の条件でこの取引を続ける意味があるか
- 別の選択肢を検討するタイミングではないか
「協議したい」と思った時点で、
それは現状に不満があるサイン
そして相手が応じないなら、
「この取引先でいいのか?」という判断をする材料が増えたと考える。
6. 経営的な打ち手を考える
ここで大切なのは、
法的な正当性を追いかけるよりも、
ビジネスとして割に合うかを冷静に見極めることです。
- この条件で続けて利益は出るか?
- 別の取引先や条件を探す余地はあるか?
- もう一度丁寧に話し合いを求めるか、距離を置くか?
相手方が協議に応じないことそれ自体が、次の経営判断のきっかけになり得る
のではないでしょうか。
7. より踏み込んで定めることは可能だが…
なお補足として、
ここまで見てきたような 曖昧な「協議条項」ではなく、
より具体的に内容を定めた場合には、
結果として相手に対してより強い対応が可能となるケースもあります。
たとえば、
- 協議の対象を明確にする
- 協議の方法や時期を具体的に定める
- 協議が行われなかった場合の扱いまで書き込む(違約金等)
といった形で設計すれば、
「協議」という言葉に、
一定の実効性を持たせること自体は理論上可能です。
もっとも、
そのような条文を置いた場合でも、
常に期待どおりの結果が得られるとは限りませんし、
契約全体の構造や当事者間の力関係によって、
実際の運用は大きく左右されます。
そのため実務上は、
あえて強い義務までは課さず、
協議条項を“調整や判断のための余地”として設けている契約も多いのが実情です。
今回のように、
条文上は協議が想定されていても、
実際には応じてもらえなかった場合には、
法的にどこまで争えるかよりも、
その対応自体を一つの材料として、
今後の取引をどう考えるかという経営判断につなげていく視点が重要といえるでしょう。
8. 協議条項は「経営判断のシグナル」として使う
「協議するものとする」という条文は、
相手を話し合いの場に縛りつける魔法の言葉ではありません。
法的にどうこうより、
「話し合いを求めたのに応じない」=経営的な判断材料
と捉えることが大切です。
契約書は、
法律的な武器である前に、
ビジネスを判断するためのツール。
書いてある条文をそのまま読むだけでなく、
相手の反応を見て、
「この取引は本当に今のままでいいのか?」
一歩引いて考える視点を持つことが「契約書に強くなる」コツです。

🔎 参考記事
ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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