ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 0. 前回までの整理(第1回の振り返り)
- 1.「結論」とは「意見表明」のこと
- 2.正しいことを書いているのに伝わらない理由
- 3.「伝える」と「伝わる」は違う
- 4.伝わらない文章の共通点
- 5.結論とは「正解」ではなく「意見表明」
- 6.意見とは「スタンス」を明確にすること
- 7.違和感を言語化するのが専門家の仕事
- 8.違和感がないなら、相談は発生しない
- 9.違和感を「課題(問い)」に変え、意見表明するという発想
- 10.意見表明は、実は一番安全な書き方
- 11.「行政書士として」ではなく「行政書士の大森は」と書く理由
- 12.踏み込むから、文章に緊張感が生まれる
- 13.意見表明が仕事につながる理由
- 14.「6ステップ構成」で見た今回の位置づけ
- 15.アウトプット課題
- 16.次回予告
0. 前回までの整理(第1回の振り返り)
このシリーズでは、
「ブログが続かない」「発信が仕事につながらない」と感じている
専門家・士業を中心に、
日々の仕事をどう言葉にしていくかをテーマに整理しています。
第1回では、次のような話をしました。
ブログが続かない原因は、
文章力や根性ではありません。
多くの場合、原因は
ネタ切れではなく、課題設定の甘さにあります。
そして、
ネタは探しに行くものではなく、
半径2メートルに落ちている。
ここで言う「半径2メートル」とは、
私生活やコンフォートゾーンの話ではありません。
- 顧客からよく聞かれる質問
- 顧客のために調べたこと
- 実務や研修で学んだこと
つまり、
仕事として日常的にやっている「課題解決」そのものです。
1.「結論」とは「意見表明」のこと
第2回のテーマは「結論」です。
今回は「結論」をテーマにしています。
ただし、
ここで一つ、誤解を外しておきたいことがあります。
このシリーズで言う「結論」は、
正解のことではありません。
一般的に「結論」と聞くと、
・正しい答え
・唯一の答え
・専門家としての最終判断
そんなイメージを持たれがちです。
しかし、このシリーズでは、そういう意味で使っていません。
今回の記事のタイトルにもしたとおり、
スタンスを明確にしないと、伝わらない。
これが、今回の記事で一番伝えたいことです。
2.正しいことを書いているのに伝わらない理由
専門家の文章で、よくある現象があります。
内容は正しい。
説明も丁寧。
間違ったことは書いていない。
それなのに、
- 最後まで読まれない
- 反応がない
- 仕事につながらない
これは珍しいことではありません。
理由はシンプルです。
「伝えている」けれど、「伝わっていない」からです。
3.「伝える」と「伝わる」は違う
「伝える」とは、情報を出すこと。
「伝わる」とは、相手の中で意味を持つこと。
専門家の発信は、
どうしても「伝える」側に寄りがちです。
でも、
仕事につながるかどうかを左右するのは、
伝わるかどうかです。
4.伝わらない文章の共通点
伝わらない文章には、
はっきりした共通点があります。
それは、
書き手のスタンスが見えないということです。
- この人は何を大事にしているのか
- どこに違和感を覚えているのか
- どんな前提でこの話をしているのか
これが見えない文章は、
途中で読まれなくなります。
5.結論とは「正解」ではなく「意見表明」
ここで重要なのは、
結論=正解という思い込みを手放すことです。
正解を書こうとすると、
- 無難になる
- 一般論に逃げる
- 誰の意見か分からなくなる
結果として、
印象に残らない文章になります。
一方で、
伝わる文章の結論はこうです。
私は、こう考えています。
これが、意見表明です。
6.意見とは「スタンス」を明確にすること
意見とは、
誰かを論破することでも、
断定することでもありません。
意見とは、スタンスです。
- 自分はどこに違和感を覚えているのか
- 何を前提に考えているのか
- どんな判断軸を持っているのか
これを言葉にすること。
それが、
結論=意見表明です。
7.違和感を言語化するのが専門家の仕事
そもそも、
人が専門家に相談するのはなぜでしょうか。
それは、
相談者自身が違和感を覚えているからです。
違和感がなければ、
人は自分で判断しています。
つまり、
違和感がある
→自分では処理できない
→専門家に相談してみよう
という流れです。
8.違和感がないなら、相談は発生しない
極端に言えば、
違和感がないなら、相談は発生しません。
逆に言えば、
違和感があるから、仕事が生まれる。
だから、
違和感=ビジネスの種
なのです。
9.違和感を「課題(問い)」に変え、意見表明するという発想
ここで、
これまで話してきたことと
ブログとの関係が、はっきりつながります。
日々の仕事の中で感じる「違和感」を、
そのまま書こうとすると、
どうしても次のような問題が出てきます。
- 個別事例になってしまう
- 守秘義務に触れる可能性がある
- 炎上しやすい書き方になる
- 業際のラインを越えかねない
このあたりを気にし始めると、
「やっぱり書かない方がいいのでは」となりがちです。
でも、
ここで発想を一段変えます。
違和感を、
事実として書くのではなく、
「課題(問い)」に変える。
たとえば、
- 「こういうケースがありました」
ではなく - 「こういう場面で、なぜ迷いが生まれるのか?」
という形にする。
つまり、
違和感をそのまま書くのではなく、
違和感の構造を問いにするのです。
そして、その問いに対して、
行政書士(or 契約書の専門家)の大森は、こう考えています。
と、意見表明をする。
ここで大事なのは、
結論を断定しないことでも、
正解を示そうとしないことでもありません。
自分のスタンスを明確にすることです。
10.意見表明は、実は一番安全な書き方
意見として書くとは、
「このケースでは◯◯だ」
ではなく、
「私は、◯◯に違和感を覚える」
と書くこと。
個別の誰かを書かない。
事実関係を断定しない。
自分のスタンスだけを書く。
これは、
守秘義務にも反しにくく、
炎上リスクも低い、
非常に安全な書き方です。
11.「行政書士として」ではなく「行政書士の大森は」と書く理由
情報発信をする際、
つい使ってしまいがちな主語があります。
それが、
「行政書士としては」
「専門家としては」
という言い回しです。
この主語は、確かに無難です。
角が立ちにくく、
同業からも突っ込まれにくい。
でも、その代わりに、
何も伝わらなくなるという大きな弱点を抱えてしまいます。
また、「行政書士として」と主語を大きくすると、
読み手の中にはこう受け取る方も出てきます。
行政書士全体の総意なのか
業界としての一般論なのか
その結果、
- 他士業から
「それは行政書士全体の見解なのか?」
と誤解されたり - 同業者から
「他にもやり方はあるのでは?」
「別の考え方もあるのでは?」
と、本来想定していない角度から突っ込まれることがあります。
これは、
自分が意図していないところで
議論の土俵がズレてしまう、ということです。
そこで私は、
主語をこう置くようにしています。
行政書士(or契約書の専門家)の大森は、こう考えています
これは、正直に言えば、
勇気がいります。
同業から
「それは個人的見解ですよね」
と指摘される可能性もあります。
でも、それでいいと思っています。
なぜなら、
それがまさに、私の意見(スタンス)だからです。
実際に発信を続けていて、
はっきりと実感していることがあります。
主語を「行政書士として」にしていた頃よりも、
「行政書士の大森は」「私は」と書くようになってからの方が、
- 他の専門家から
「この文脈なら、こういう考え方もありますよ」 - 同業者から
「別の方法もあるので、補足するといいかもしれませんね」
といった、
建設的なアドバイスをもらえることが圧倒的に増えました。
ここは、とても大きな違いです。
主語が「行政書士として」だと、
指摘はどうしても、
- 正しいか/間違っているか
- 一般論として妥当か
という方向に向かいがちです。
一方で、
主語を「私は」にすると、
- その前提なら理解できる
- 別の前提なら、こうも考えられる
- もう一つの選択肢も書くと親切かもしれない
という、
文脈を前提にした対話が生まれます。
仮に、
自分の発信の中に理解が足りなかった点や
表現が足りない点があったとしても、
「私はこういう前提で、こう考えています」
と書いていれば、
- 知ったかぶり
- 断定
- 上から目線
とは受け取られにくい。
むしろ、
より良い表現に育ててもらえることが多い。
これは、
発信を続ける上で、
非常に大きな差だと感じています。
今回のテーマである「スタンスを明確にする」とは、
言い換えれば、
主語を自分に引き寄せること
です。
「行政書士一般」ではなく、
「行政書士(or 契約書の専門家)の大森はどう考えるのか」。
ここを曖昧にしたままでは、
どれだけ丁寧に書いても、
文章は伝わりません。
12.踏み込むから、文章に緊張感が生まれる
主語を自分に置くと、
文章を書くときの緊張感が変わります。
- 本当にそう思っているか
- 雑に書いていないか
- 根拠はあるか
自分に問い続けることになります。
結果として、
真剣に書く → 言葉が研ぎ澄まされる → 伝わる
という流れが生まれます。
13.意見表明が仕事につながる理由
意見表明がある文章は、
- 考え方が見える
- 判断軸が分かる
- 相談後のイメージが湧く
だから、
この人に相談したい
につながります。
全員に好かれる必要は、ありません。
発信を続ける中で、
私は次第に、
スタンスに共感してくださった方とだけ仕事をすればよい
と考えるようになりました。
その結果として、
ご相談やご依頼の件数自体は、以前より減っています。
しかし一方で、
仕事の始まり方が、明らかに変わりました。
以前は、
「まず話を聞いてみる」
「条件次第では検討する」
という入口から始まることも少なくありませんでした。
今は違います。
多くの場合、
私の考え方や姿勢に共感していただいた状態で、
仕事の話が始まります。
つまり、
最初から一定の信頼が置かれている。
その結果として、
価格について言及されることは、ほとんどなくなりました。
これは、
強気に出ているからでも、
条件を厳しくしているからでもありません。
スタンスを理解したうえで、
その価値に納得してくださっているという、ただそれだけの話です。
全員に向けた無難な発信をしていた頃よりも、
今の方が、仕事は静かで、安定しています。
そして何より、
無理のない関係性の中で、
腰を据えて仕事ができるようになりました。
発信とは、
集客のための装置ではなく、
価値観のすり合わせなのだと思います。
スタンスを明確にするということは、相手を選ぶことでもあります。
しかしそれは、
誰かを排除するという意味ではありません。
必要な人と、適切な距離で、適切な形でつながるための方法論です。
全員に届かなくてもいい。
ただ、届くべき人に、きちんと届けたい。
私は今、そう考えています。
14.「6ステップ構成」で見た今回の位置づけ
このシリーズでは、
文章を次の6ステップで整理しています。
1.課題(問い)
2.結論(仮説・意見表明)
3.共感(相手視点・譲歩)
4.本質(構造・前提・ルール)
5.適用(具体的な当てはめ)
6.提案(次の一手)
今回は、
②結論(仮説・意見表明)の回でした。
15.アウトプット課題
正解はありません。
当たっている必要もありません。
【アウトプット課題】
1.最近感じた「違和感」を3つ書き出してください
2.それぞれを、
「〜なのではないか?」という
1文の意見表明にしてみてください
16.次回予告
次回は、第3回:共感です。
なぜ、
- 意見表明だけでは伝わらないのか
- 専門家の話が「上から目線」に聞こえてしまうのか
そして、
伝わる文章にするための一番のポイントを扱います。

【音声解説】
本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。







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