ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
1. 講座概要
このたび、長岡商工会議所様にて、
「知らないではすまされない!取適法(旧下請法)のポイント」
講座の講師を担当いたしました。
中小受託取引適正化法、いわゆる取適法は、旧下請法を改正・強化する形で施行された法律です。
今回の講座では、取適法の制度改正の内容だけでなく、実際の企業実務において、契約書・注文書・発注書・支払条件・価格協議・記録保存をどのように見直すかという点も含めてお話ししました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 講座名 | 知らないでは済まされない取適法(旧下請法)のポイント |
| 主催者 | 長岡商工会議所様 |
| 実施日 | 2026年8月27日 |
| 実施形式 | 会場・アーカイブ視聴 |
| 申込者数 | 合計約100名 |
| 対象者 | 企業の経営者、管理職、総務・経理・営業・購買・現場担当者等 |
| 講師 | 行政書士大森法務事務所 大森 靖之 |
| 主な内容 | 取適法の全体像、適用対象、支払期日、価格協議、振込手数料、 発注書・契約書、仕様変更、検収、記録保存 |

今回の講座には、会場参加およびアーカイブ視聴を含め、合計約100名の皆様にお申し込みいただきました。
取適法というと、「大企業だけが気にすればよい法律」と思われがちです。
しかし、実際には、自社が大企業や元請企業から仕事を受ける場面では「守られる側」になり、自社が外注先や協力会社に仕事を依頼する場面では「守る側」になります。
つまり、多くの中小企業にとって、取適法は他人事ではありません。
そこで今回の講座では、単なる制度説明にとどまらず、日々の受発注実務にどう落とし込むかを意識して構成しました。
2. 講座で重視したこと
今回の講座で特に重視したのは、
「取適法を、現場の取引実務にどう落とし込むか」
という点です。
取適法では、適用対象、発注内容の明示、書類等の保存、支払期日、遅延利息、禁止行為、価格協議など、確認すべきポイントが多くあります。
しかし、法律の説明を聞いただけでは、会社の実務は変わりません。
実際には、
- 自社の取引が取適法の対象になり得るか
- 発注書に必要事項が記載されているか
- 支払期日は受領日・役務提供日から60日以内になっているか
- 振込手数料を差し引く運用になっていないか
- 価格改定の申入れを放置していないか
- 追加作業や仕様変更を口頭だけで進めていないか
- 検収期間や不備通知の方法が明確になっているか
- 契約書と発注書の内容が矛盾していないか
といった具体的な確認が必要になります。
そこで今回は、前半で取適法の制度改正の全体像を確認し、後半で契約書・注文書・発注書・メール・議事録といった実務上の書類や記録の使い方を解説しました。
制度改正を「知って終わり」にするのではなく、受講者の皆様が自社に戻ってから、実際に発注書や契約書を見直せる状態にすることを意識しました。
3. 講座で取り上げた主な視点
今回の講座では、次のような視点を中心にお話ししました。
| 視点 | 講座で意識したポイント |
|---|---|
| 取適法の全体像 | 旧下請法から何が変わり、なぜ今重要なのかを整理する |
| 適用対象の判定 | 取引内容、資本金、従業員数を確認し、「うちは対象外」と決めつけない |
| 支払期日 | 受領日・役務提供日から60日以内という考え方を確認する |
| 振込手数料 | 代金から当然に差し引く運用になっていないか確認する |
| 価格協議 | 値上げ申入れを無視せず、協議・回答・記録を残す |
| 無償対応・追加作業 | ついで対応、無償対応、仕様変更を曖昧にしない |
| 金型・木型の保管 | 保管期間、保管費用、返却・廃棄手順を整理する |
| 契約書・発注書 | 何を、いつまでに、いくらで、どのように支払うかを明確にする |
| 記録・証跡 | メール、議事録、注文書、注文請書などを現場を守る道具として使う |
特に今回の講座では、振込手数料を差し引く取扱いや、金型・木型の保管、価格協議への対応など、最近の実務で問題になりやすいテーマも取り上げました。
取適法対応は、法務部門だけの問題ではありません。
経営者、総務、経理、購買、営業、現場担当者が、それぞれの業務の中で確認すべきテーマです。
4. 取適法時代の契約実務の歩き方
取適法対応では、まず自社の取引が対象になるかを確認する必要があります。
ただし、それだけでは十分ではありません。
実務上は、
- どの条件で発注したのか
- どの内容で受注したのか
- いつ受領・役務提供があったのか
- いつまでに支払うのか
- 追加作業は当初契約に含まれるのか
- 仕様変更によって代金や納期は変わるのか
- 価格改定の申入れにどう対応したのか
- 金型・木型などの保管条件は決まっているのか
を、後から説明できる状態にしておくことが重要です。
たとえば、価格協議については、値上げを必ず受け入れなければならないということではありません。
重要なのは、申入れを無視せず、必要な確認を行い、協議や回答の経緯を記録に残しておくことです。
今回の講座では、価格協議の進め方として、
- まず担当者間で相談する
- 原材料費・労務費・エネルギーコストなどの根拠を整理する
- 必要に応じて上位者を交えて協議する
- 受け入れる場合も、受け入れない場合も理由を残す
- 申入書、メール、議事録、回答書を保存する
という流れで説明しました。
また、仕様変更や追加作業についても、口頭だけで進めるのではなく、変更内容、追加費用、納期への影響、検収方法などを、メールや書面で残しておく必要があります。
「ついでにお願いします」
「軽微な修正なので無償でお願いします」
「仕様は変わりますが、金額はそのままでお願いします」
こうしたやり取りは、現場では珍しくありません。
しかし、業務範囲や追加費用が曖昧なまま進むと、後日のトラブルや採算悪化につながります。
取適法時代の契約実務では、
- 協議したか
- その経緯を記録に残したか
が、これまで以上に重要になろうかと思われます。
5. 質疑応答・受講者とのやり取り
講座中および講座後には、価格交渉月間、金型の長期保管、減額の理由、従業員数基準などについて、実務的なご質問をいただきました。
いずれも、単なる法律知識ではなく、実際の取引現場で判断に迷いやすいテーマです。
たとえば、金型や木型の保管については、長期間保管しているにもかかわらず、保管費用や返却・廃棄手順が明確になっていないケースがあります。
また、減額についても、すべての減額が直ちに問題になるわけではありませんが、仕様不適合や納品物の不備などの根拠があるのか、減額幅に合理性があるのか、協議・合意・記録が残っているのかが重要になります。
今回の質疑応答からも、取適法対応は「法律を知っているかどうか」だけではなく、現場でどのように確認し、説明し、記録に残すかが問われていると感じました。
6. 講座を終えて
今回の長岡商工会議所様での講座を通じて、取適法対応は、単に法律を知ることではなく、日々の受発注実務を見直すことだと改めて感じました。
すべての担当者が法律の専門家になる必要はありません。
大切なのは、日々の業務の中で、
- この取引は取適法の対象になり得るのか
- 発注書に必要事項は書かれているか
- 支払期日は適切か
- 振込手数料や協力金などを当然に差し引いていないか
- 価格協議の申入れを放置していないか
- 仕様変更や追加作業を記録しているか
- 契約書と発注書、メール、議事録は整合しているか
と立ち止まれることです。
取適法は、単なる規制強化ではありません。
発注側・受注側の双方が、取引条件を明確にし、無用なトラブルを防ぎ、適正な取引関係を築くためのルールでもあります。
そして、そのために必要になるのが、契約実務です。
契約書、発注書、注文書、注文請書、メール、議事録は、現場を縛るためのものではありません。
むしろ、現場を守るためのツールです。
今回の長岡商工会議所様での講座では、取適法という制度改正の全体像と、取適法時代における契約実務の進め方の両方をお伝えすることを目指しました。
今後も、法律を一方的に説明するのではなく、現場で使える言葉に置き換えながら、企業の皆様が安心して取引を進められるような講座を行ってまいります。
【長岡花火のオブジェ@長岡駅前】


🔎 参考記事
ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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