ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
1. 講座概要
このたび、大館商工会議所様にて、
「口約束のトラブルを防ぐ 関連法規に基づく契約の基礎知識と対策」
の講師を担当いたしました。
今回は、契約書の細かな条文解説というよりも、日々の取引で起こりやすい「言った・言わない」を防ぐために、見積書、注文書、注文請書、メール、議事録などをどのように活用すべきかを中心にお話ししました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研修名 | 口約束のトラブルを防ぐ 関連法規に基づく契約の基礎知識と対策 |
| 主催者 | 大館商工会議所様 |
| 実施日 | 2026年8月26日(水) |
| 時間 | 14:30〜16:30 |
| 会場 | プラザ杉の子 |
| 対象者 | 中小・小規模事業者の皆様 |
| 講師 | 行政書士大森法務事務所 大森 靖之 |
| 主な内容 | 口約束のリスク、契約の成立、書面化の重要性、見積書・注文書・メールの活用、 取適法・フリーランス保護法の基本、価格交渉、契約書の確認ポイント |
「契約書」と聞くと、難しい法律文書を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、今回お伝えしたかったのは、立派な契約書を毎回作りましょう、という話ではありません。
大切なのは、取引の中で決めたことを、後から確認できる形で残しておくことです。
たとえば、
- 何をどこまで行うのか
- いつまでに納品するのか
- いくらで、いつ支払うのか
- 追加作業が発生した場合どうするのか
- 価格が大きく変動した場合どう協議するのか
こうした内容が曖昧なまま進むと、後からトラブルになりやすくなります。
そこで今回は、口約束を前提にした取引を、どのように書面化・言語化していくかを、実務寄りに整理しました。
2. 講座で重視したこと
今回の講座で特に重視したのは、「契約書を作ること」よりも、「取引条件を明確にすること」です。
口約束そのものが直ちに無効になるわけではありません。
契約は、申込みと承諾があれば、口頭でも成立します。
問題は、契約が成立するかどうかではありません。
後から、
「そんなことは言っていない」
「そこまで含まれるとは思っていなかった」
「追加費用がかかるとは聞いていない」
「納期はもっと早いと思っていた」
といった認識違いが起きたときに、内容を証明できるかどうかです。
そのため、今回の研修では、契約書だけでなく、見積書、注文書、注文請書、メール、議事録といった日常業務で使う書類を、契約実務の道具として活用することをお伝えしました。
特に、中小企業・小規模事業者の取引では、毎回本格的な契約書を作ることが現実的でない場面もあります。
だからこそ、まずは見積書やメールに一文を足す。
注文書と注文請書をきちんと残す。
打合せ後に確認メールを送る。
こうした小さな書面化が、大きなトラブルを防ぐ第一歩になります。
3. 講座で取り上げた主な視点
今回の講座では、次のような視点を中心にお話ししました。
| 視点 | 研修で意識したポイント |
|---|---|
| 口約束のリスク | 記憶違い、担当者変更、仕様変更、証拠不足を防ぐ |
| 契約の成立 | 申込みと承諾があれば、口頭・メールでも契約は成立し得る |
| 書面の役割 | 合意内容を固定し、後日の証拠として残す |
| 範囲・期間・お金 | 契約書を見るときは、まずこの3点を確認する |
| 見積書 | 金額表ではなく、業務範囲・前提条件・追加費用を示す条件表として使う |
| 注文書・注文請書 | 申込みと承諾を証明する書類として活用する |
| メール・議事録 | 追加作業、価格改定、納期変更をその都度記録する |
| 価格交渉 | 「お願い」ではなく、根拠を示した協議として進める |
| 関連法規 | 取適法・フリーランス保護法の基本を押さえる |
講座では、契約書を取引条件を整理するためのツールとして位置づけました。
契約書や書面を交わすことは、相手を疑うことではありません。
むしろ、認識違いを防ぎ、取引を安定させるためのものです。
4. 口約束によるトラブルを防ぐ契約実務
口約束によるトラブルを防ぐために、まず確認すべきなのは、範囲・期間・お金の3点です。
- 範囲とは、何をどこまで行うのか
- 期間とは、いつからいつまで、いつ納品するのか
- お金とは、いくらを、いつ、誰が支払うのか
この3点が曖昧なまま進むと、どれだけ立派な契約書を作っても、実務上は不安定になります。
たとえば、見積書では、単に金額だけを書くのではなく、
- 業務範囲
- 含まない作業
- 有効期限
- 前提条件
- 別途費用となるもの
- 価格改定の可能性
- 諸経費・送料・振込手数料の負担
を整理しておくことが重要です。
また、注文書と注文請書は、個別契約の成立を示す大切な書類です。
- 注文書は「この条件でお願いします」という申込
- 注文請書は「その条件で受けます」という承諾
この2つがそろうことで、後から取引内容を確認しやすくなります。
さらに、追加作業や仕様変更が発生した場合には、口頭だけで済ませず、メールで確認しておくことが重要です。
たとえば、
「今回の対応範囲は〇〇までとし、これを超える作業は別途見積りとします。」
「改定後の単価は、〇月〇日以降の発注分から適用します。」
「本日の打合せ内容は以下のとおりです。相違があればご指摘ください。」
こうした一文を残しておくだけでも、後日のトラブル予防につながります。
5. 受講者の声
講義の最後には、資材価格の高騰や調達遅延が生じた場合に、既に契約済みの工事や取引をどのように扱うべきかという実務的なご質問もいただきました。
たとえば、契約後にメーカーから値上げ案内が来た場合、直ちに一方的な変更が認められるわけではありません。
一方で、当初の見積りと実際の調達条件に大きなズレが生じた場合には、価格や条件について協議し、必要に応じて変更契約を結んでおくことが重要です。
今回のご質問からも、口約束や曖昧な条件のまま取引を進めることが、実際の現場で大きな不安につながっていることを改めて感じました。
法律の知識そのものよりも、「いつ、何を、どのように書面で残すか」が、現場では重要になります。
6. セミナーを終えて
今回の大館商工会議所様での研修を通じて、口約束のトラブルを防ぐためには、契約書だけでなく、日々の書類やメールの使い方が非常に重要だと改めて感じました。
契約書は、会社の売上げに直接つながる書類ではないかもしれません。
しかし、業務範囲、納期、支払条件、追加作業、価格改定のルールを明確にすることで、無用なトラブルや採算割れを防ぐことができます。
その意味で、契約書や見積書、注文書、メールは、会社の儲け方を守るための文書です。
すべてを一度に整える必要はありません。
まずは、自社の見積書に、
「本見積金額には、上記業務範囲を超える追加対応は含みません。」
「原材料費等の著しい変動がある場合は、別途協議します。」
といった一文を加えることからでも十分です。
小さな書面化が、大きなトラブルを防ぎます。
今後も、法律を一方的に説明するのではなく、現場で使える言葉に置き換えながら、企業の皆様が安心して取引を進められるような研修を行ってまいります。
【特急スーパーつがる号】

【渋谷駅前から移設された“青ガエル”@大館駅前】


【ハチ公の生まれ故郷@大館駅前】


【花輪線@大館駅構内】


【大館商工会議所の方から教えていただいた花善さんの比内鶏の”鶏めし”でちょっと早めの夕食(美味)】



【おまけ(これも美味しかった!)】



🔎 参考記事
ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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