ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに
2025年5月26日、改正戸籍法が施行され、戸籍に氏名の「読み仮名」を記載する制度が始まりました。
これは、行政のデジタル化を背景とした本人確認の厳格化や事務の効率化を目的とするもので、戸籍における氏名の表記に新たな情報項目(読み仮名)が加わるのは、日本の戸籍制度の歴史上初めてのことです。
本記事では、この制度のポイント、通知の仕組み、修正の方法、マイナポータルでの確認手順、そして「読み仮名」の審査基準などについて、法務省の公表資料に基づいて解説します。
なぜ「氏名の読み仮名」が戸籍に必要なのか
これまで、戸籍には氏名の漢字表記のみが記載されており、読み仮名が法的に戸籍に記録される仕組みは存在しませんでした。
一方で、住民票、マイナンバー、税、年金、パスポート、保険など、さまざまな行政分野において個人情報の連携・統合が進む中、氏名の読み方に不一致があると、本人確認や情報照合に支障を来すケースが生じていました。
とくに、マイナンバー制度を基盤とした情報連携においては、漢字の読み間違いや読み仮名の不統一が、データ突合や名寄せ処理の精度を損ねるリスクとして認識されています。
今回の制度は、そうした課題を解消し、戸籍において読み仮名を法的に記録・整備することで、正確な本人確認と効率的な情報連携を実現するためのものです。
読み仮名はどのように通知される?
本籍地の市区町村が、住民基本台帳などの情報をもとに、各戸籍に登録されている氏名の読み仮名を整理し、原則として2025年6月以降に「戸籍単位」で通知はがきを発送します。
● 通知のポイント
- 通知は「戸籍」単位で送付され、筆頭者を含む戸籍内の全員が対象となります。
- はがきの記載内容:
- 筆頭者:名字+名前の読み仮名
- それ以外の人:名前の読み仮名のみ
通知された読み仮名に異議がある場合は、1年以内(=2026年5月25日まで)に届け出を行う必要があります。
登録された読み仮名に誤りがある場合は?
通知された読み仮名が、実際の使用例と異なる場合や、変更を希望する場合には、本籍地の市区町村に対して届け出を行うことができます。この届け出には期限があり、原則として1年以内の届出が必要です。
期限までに届け出がない場合、通知された読み仮名の内容で正式に戸籍に記録されることになります。
読み仮名の届け出が必要なケースとは?
以下のような場合には、自治体への届け出が必要です。
- 通知された読み方に誤りがある(例:「健」を「たけし」と読まれているが、実際は「けん」)
- 実生活で使用している読み方と異なる
- 登録された読み仮名が社会生活上支障があると感じる
届け出の際は、実際に使用している読み方を示す証拠資料(通帳、パスポート、保険証など)を提出することで、自治体による確認を受けることになります。
マイナポータルでの確認・修正方法(実際にやってみた!)
通知が届く前でも、自分の読み仮名がどのように登録されているかは、マイナポータルから確認することが可能です。
▼ マイナポータルでの確認方法
- マイナポータルにアクセス(https://myna.go.jp/)
- マイナンバーカードと暗証番号を使ってログイン
- トップ画面から「証明書」→「すべて見る」→「戸籍」→「戸籍のフリガナ申請」
- 氏名の読み方が表示される
▼ 修正手続きもオンラインで可能
- 修正の申請も、マイナポータル経由でオンライン提出が可能です。
- 提出資料のアップロードも行えます。
※電子証明書が有効なマイナンバーカードとスマートフォン、またはICカードリーダー付きPCが必要です。
▼ 実際にやってみた!(スマホのマイナポータルからの読み仮名確認)
- マイナンバーカードの読み取り2回
- ちょっと分かりづらい(かも)…
- 電子が苦手な方はハガキを待った方がいいかも…






氏名の「読み仮名」に関する審査基準とその背景
読み仮名の届け出にあたっては、法務省が2024年2月に公表した「氏名の読み仮名に関する判断指針」に基づき、個別具体的な事情を考慮しながら判断されることになっています。
▼ 認められない例(判断指針で「不適切」とされる読み仮名の例)
- 太郎 → ジョージ(漢字の意味・読み方と無関係)
- 健 → けんさま(尊称が含まれている)
- 高 → ひくし(漢字の意味と著しく乖離している)
▼ 一定の場合に認められる可能性がある読み仮名(法務省の例示)
- 心愛 → ここあ(一部の読みが対応し、社会的にも一般に用いられている)
- 彩夢 → ゆめ(読みの一部に対応し、置き字を含む場合)
- 飛鳥 → あすか(熟字訓による読み方として一般に認められている)
判断においては、「一般に認められている読み方かどうか」「子の福祉に反しないか」「社会通念上相当かどうか」といった観点が重視されます。
また、出生届に記載される新生児の読み仮名についても、自治体が内容を確認し、必要に応じて由来の説明や辞書・雑誌のコピーなど資料の提出を求められることがあります。判断が難しい場合には、自治体から法務局に照会される運用も想定されています。
よくあるご質問
Q1. 読み仮名の届け出は絶対必要ですか?
→ 通知された内容に誤りがなければ、特に手続きは不要です。自動的にその読み方で戸籍に記載されます。
Q2. 漢字を変更したいときも届け出できますか?
→ いいえ。今回の制度は「読み仮名の登録」に関するもので、漢字表記そのものの変更(いわゆる改名)には家庭裁判所の許可が必要です。
まとめ|読み仮名の登録は「社会の前提」へ
氏名の読み仮名を戸籍に記載する制度は、これからのデジタル行政における基本インフラとも言える制度です。
行政手続き、民間の契約、銀行・保険など、あらゆる場面で「本人確認」はより厳密になっていきます。そのためには、漢字だけでなく「正確な読み方」の登録が必要不可欠です。
まずは、マイナポータルでご自身やご家族の氏名の読み方を確認し、必要があれば、忘れずに1年以内の届け出を。
🔗 参考リンク
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