ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
「今度なにかあったら…」では伝わらない ― 行政書士として信頼を得るための第一歩
開業して間もない行政書士の方とお話をすると、よくこんな言葉を耳にします。
「今度なにかあったら、お仕事回してください!」
前向きな姿勢の表れだと感じる一方で、少しもったいないな…と思うこともあります。
なぜなら、相手にとって「何かあったら」と言われても、何を頼んでいいのか分からないからです。
私もかつては、まさにその“言いがち側”の一人でした。
行政書士として開業して間もない頃、会合や研修の場で出会う先輩たちに「何かあったらお願いします!」とお伝えすることがありました。
けれども、振り返ってみると、その言葉がどれだけ曖昧だったか、今なら痛感します。
新人行政書士とベテランの“すれ違い”
この業界では、「信頼関係がすべて」と言っても過言ではありません。
それだけに、新人側の“やる気”と、ベテラン側の“慎重さ”が、すれ違ってしまう場面も少なくありません。
たとえば、ある行政書士会の行事で聞こえてきたやり取り。
新人「何かあったら仕事ください!」
ベテラン「何があったらお願いしたらいいの?」
新人「…(沈黙)」
この沈黙、私も経験者なのでよく分かります(苦笑)。
言っている側は、やる気と好意でお伝えしているつもりなのに、受け取る側には情報が足りず、頼むに頼めない——そんな構図です。
中堅の立場になってみると…
開業して12年を迎えた今、少しずつ“お願いする側”の気持ちも分かってきました。
お客様からいただいた案件を、どなたかにお願いするというのは、自分の看板を貸すようなもの。
当然ですが、実績も見えず、仕事ぶりも分からない方に大切なお客様を託すことには、少なからず不安があります。
たとえば——
- 納期を守ってくれるだろうか
- 報告・連絡・相談はきちんとしてくれるだろうか
- お客様に勝手な連絡を入れたりしないだろうか
- 秘密はしっかり守ってくれるだろうか
…そんな不安要素が、ついつい頭をよぎってしまうのです。
信頼を得るには「リスクの火種」を消すこと
しかし、逆に言えば、その“リスクの火種”さえきちんと潰せば、ベテランは必ずチャンスをくれる人たちです。
私もそうでしたし、今でも「この人なら任せられる」と感じる方には、むしろどんどんお願いしたいと思っています。
では、どうすればその火種を消せるのか。
私自身が実際に「安心してお願いできる」と感じたポイントを、いくつかご紹介します。
安心して仕事をお願いできる士業(行政書士以外も含む)の特徴
① 何よりも“納期”を守る(守れない場合は早めに報告)
行政書士の仕事は、お客様の人生や事業に直結する場面も少なくありません。
「遅れても仕方ない」は通用しない世界です。
万が一、間に合わなそうな場合でも、早めに相談してもらえれば、対応方法も考えられます。
② 自分で勝手に判断しない。迷ったら即相談
「判断ミス」は、お客様の信頼を一気に失う原因になります。
とくに初めて扱う分野では、迷った時点ですぐに相談する。
これは、リスク管理の基本です。
③ 報連相(報告・連絡・相談)をこまめに行う
地味ですが、これほど効く“安心材料”はありません。
「いまどこまで進んでいるか」「ここは確認してもいいか」
そうした一報があるだけで、依頼側の安心感はグンと増します。
④ お客様とは“直接”やり取りしない(または必ず報告)
案件を共有する立場でも、お客様との窓口が誰かは極めて重要です。
ベテランが窓口の場合は、勝手に連絡を入れないこと。
どうしても必要な場合は、事前に許可を得ておくことが鉄則です。
⑤ 秘密は絶対に守る
行政書士にとって守秘義務は、法律で定められた当然の義務。
ですが実際には、ちょっとした雑談やSNS投稿での“うっかり漏洩”が後を絶ちません。
意識していてもやってしまうケースもあるからこそ、「話す前に確認」「書く前に再チェック」が大切です。
「当たり前」を大切にできる人が選ばれる
ここまで読んでいただいて、「そんなの社会人として当たり前じゃないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
でも、実はこの業界では、その“当たり前”を当たり前にできる方が、まだまだ少ないと感じます。
だからこそ、特別な技術がなくても、基本的なことを丁寧に積み重ねるだけで、大きな信頼につながるのです。
経験値よりも「誠実さ」が残る
行政書士という仕事は、専門性や経験値がものをいう世界です。
でも、スタート時点では誰だって未経験。
だからこそ、「この人なら誠実にやってくれる」と思ってもらえるかどうかが、最初の勝負どころです。
私自身、かつてたくさんの方にご迷惑をおかけし、そこから学びました。
そして今もなお、日々学びの連続です。
最後に:仕事は“信頼の橋”の上を渡ってくる
行政書士の仕事は、スキルだけで回ってくるわけではありません。
紹介・協業・外注——いずれの形であっても、信頼という“橋”の上を渡ってきます。
だからこそ、
- 丁寧に
- 誠実に
- 地道に
その橋を少しずつ太く、丈夫にしていくことが、何よりも大切だと思うのです。
もし、この記事を読んでくださった方の中に、
「自分はまだまだ…でも、ちゃんと信頼される仕事をしたい」と感じている方がいたら——
一緒にがんばりましょう。
そして、ご縁があれば、ぜひお手伝いしていただけたら嬉しいです。
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