ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに
行政書士として開業したばかりの頃。
私には、どうしても乗り越えられない壁がありました。それは——営業です。
正直に言えば、私は今でも“営業が得意”だとは思っていません。苦手です。
開業当初は「営業なんて自分にできるわけがない」と思い込んでいました。
専門知識で勝負できるはずだ、説明がしっかりできれば契約してもらえるはずだ——そう信じていたのです。
でも、現実はそう甘くありませんでした。
相談は受けられても、受任につながらない。何度も失注を重ね、「また断られた…」と落ち込む日々。
そんな私がどうやって営業スキルを身につけ、今では受任につながる対話ができるようになったのか。
この記事では、「営業が苦手」「売り込みが怖い」と感じているこれからの行政書士さんへ向けて、私の実体験とともに、“信頼される営業”の考え方とコツをお伝えしていきます。
「説明が下手」ではなく「営業ができていなかった」だけだった
開業して間もない頃の私は、相談対応において「きちんと説明できた」と思っていました。
でも結果はなかなか受任に繋がらない——これは「説明が下手だった」のではなく、“営業”という視点がなかったことが原因だったと、今では思います。
あるセミナーで生命保険のトップセールスマンの話を聞いた時に、私は初めて「顧客目線がまるで足りていない」ことに気づかされました。
- いきなり本題に入る
- 専門用語を並べる
- 自分の話ばかりしてしまう
これは、“営業が苦手”というより、「営業とは何か」が分かっていなかっただけだったのです。
2. 妻のひと言が、営業スタイルを変えるきっかけに
何件も連続で受任に繋がらないことが続き、また、問い合わせすらも来なくなってさすがに落ち込んでいたある日の夜。
私は、夕食の席でぽつりと妻にこぼしました。
「営業って、難しいよなぁ…」
すると妻が、何気なくこんなことを言ったんです。
「しゃべりすぎなんじゃない?
自分が営業を受ける側だったら、
ずーっと話してくる人と、ちゃんと話を聴いてくれる人、
どっちに好印象持つ?どっちが好きになる??」
ハッとしました。
自分では“ちゃんと説明している”つもりでも、それはあくまで“自分のペース”だったのかもしれません。
それから私は、「しゃべる営業」から「聴く営業」へとスタイルを変えていきました。
営業が上手な人は“売り込まない人”だった
私はそれまで、営業=売り込み、というイメージを持っていました。
実際に、上述の生命保険のトップセールスマンの対応を見ていく中で気づいたのは、
営業が上手な人ほど、売り込まないということでした。
その他にも営業が上手な人の言動を観察して共通していたのは、
- 相手の話をとにかく丁寧に「聴く」
- 難しい話はしない、言葉がやさしい
- 判断を急がせず、選択肢を示してくれる
…つまり、“売り込む”のではなく、“信頼してもらう”営業をしていたのです。
「アイスブレイク」と「聴き方」で信頼が生まれる
私はそれまで、「ちゃんと説明しなきゃ」「理屈で納得させなきゃ」と意気込んでいましたが、
実は営業としてはNGでした。
最初の数分で空気が和むだけで、その後の会話の流れが大きく変わるのです。
◆ アイスブレイクの効果
- 最近の天気やニュース
- 地元の話題
- 「今日は迷わず来られましたか?」
たったそれだけの話で、相手が一気に安心してくれます。
営業が苦手な私でも、「話しやすい人」と思ってもらえるだけで、十分なスタートが切れました。
専門性よりも「伝わる言葉」の方が営業では大事
開業当初、「お客様に信頼してもらうには、正確な情報を正確に伝えることだ」と思っていました。
でも実際には、相手にとって“分かりやすい”ことが最優先だったのです。
◆ 専門用語より「やさしい言葉」が強い
たとえば、
- 「許認可」より「営業免許」
- 「契約不適合責任」より「何か不具合があった場合の責任」
このように、わかりやすい表現に言い換えるだけで、相手は「この人はちゃんと自分のレベルに合わせてくれている」と感じてくれます。
これこそ、営業において“伝える力”が求められる理由です。
「営業トーク」より「伴走型の提案」が信頼につながる
ビジネスの基本は「結論ファースト」。
でも、行政書士としての営業ではそれが逆効果になることもあります。
私がうまくいったときの多くは、
- 話をじっくり聴く
- いくつかの解決策を提示する
- メリット・デメリットも正直に伝える
- 最終的な判断は相手に委ねる
…という流れを踏んでいたときでした。
このような「一緒に考える」スタイルは、営業が苦手な私にとってもやりやすく、何より信頼してもらいやすい方法でした。
第一印象は“無言の営業”
営業が苦手でも、実は何も話さずともできる営業があります。それが「第一印象」です。
- 挨拶の仕方
- 声のトーン
- 表情(できれば笑顔)
- 身だしなみ(清潔感)
これだけでも、「この人は感じがいい」「信頼できそう」と思ってもらえることがあります。
実際、私自身もこの“雰囲気”だけで助けられたことが何度もあります。
営業が苦手でも「安心感」で選ばれる行政書士になれる
私は今でも、自分を「営業上手」だとは思っていません。
でも、「話をよく聞いてくれる」「わかりやすく説明してくれる」
そんな評価をいただけるようになってきました。
つまり、営業が得意でなくても、「安心感」を与えることで信頼は得られるのです。
そのためには…
- 焦らない
- 売り込まない
- 寄り添う姿勢を大切にする
この3つを守るだけで、営業の苦手意識はずいぶん軽くなりました。
✔ 営業が苦手な行政書士向け:チェックリスト
✅ アイスブレイクで話しやすい空気を作る
✅ 話すより「聴く」ことを意識する
✅ 専門用語は使わず、やさしい言葉で説明
✅ 一緒に考えるスタイルで信頼を得る
✅ 第一印象(挨拶・身だしなみ)を大切に
✅ 結論は急がず、相手に委ねる
✅ 売り込まず、「安心感」で選ばれるように
最後に──「営業が苦手」でも大丈夫。むしろ武器になります。
私は営業が本当に苦手でした。今でも得意とは言えません。
でもその“苦手さ”があるからこそ、相手に寄り添えたと思っています。
営業が得意な人は「流れるように話す人」ではなく、
「丁寧に聴いて、誠実に説明できる人」です。
妻のひと言がなかったら、今でも「しゃべり続ける営業」のままだったかもしれません。
だからこそ、今この記事を読んでくれているあなたにも、声を大にして伝えたいのです。
営業が苦手でも、信頼される方法はあります。むしろ、その“苦手意識”こそが、あなたらしい営業スタイルにつながるはずです。
どうか、ご自分のペースで、“信頼される行政書士”を目指してください。
私も、今なお手探りしながら、一歩ずつ進んでいます。
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