ビジネス法務

【契約書の盲点シリーズ】送料って、誰が負担するんですか?──資材担当なら押さえたい「コスト改善」のツボ

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

今回のテーマは、「送料負担」の話。

資材調達や購買部門で働いている方なら、一度はこんなやりとりをしたことがあるのではないでしょうか?


  • 「この価格なら発注してOKです!」
  • 「あ、でも送料は別ですよ?」
  • 「え、送料ってどっち持ち?」

実はこの送料の取り決め
何となく流してしまうと、あとあとトラブルやコスト増に直結しかねないポイントなのです。

特に、契約書の中では意外と見落とされがち

今回は、そんな「送料問題」について、資材担当者目線で分かりやすく解説していきます!

まず基本のおさらいから。

多くの取引基本契約書や売買契約書では、
送料についてこう決められています。

「本商品の送料は売主の負担とする。」

つまり、売る側が送料を持つという前提です。

実際、
・ネット通販
・一般小売
などでも「送料無料」が当たり前になっていますよね。

だからこそ、つい資材担当者も『送料込みでこの価格』だと思い込みがちです。

でも…
本当にそれで大丈夫でしょうか?

もし、以下のようなケースだったら──?

  • 超大型で、チャーター便じゃないと運べない
  • 精密機器で、特殊な梱包・取り扱いが必要
  • 危険物で、特別な輸送資格がいる

こういった場合、送料も桁違いに高くなることが多いのはご承知のこととと思います。

にもかかわらず、
「契約書でそうなっているから資材担当の我々には関係ない」
と思い込んでいると、

👉 「特別送料分をまるっとかぶる」
👉 「利益が圧迫される」
👉 「あとで売主とモメる」

という流れに陥るリスクがあります。

実は、こういう“イレギュラー送料”については、
契約書に別途定めておくべきなのです。

では、ちょっとイメージしてみましょう。

仮に1回の送料が1,000円だったとします。
小さな金額ですよね。

でも、これが…

  • 毎月50件の発注
  • 年間600件

だとすると、
送料だけで年間60万円

しかも、
・拠点が増えた
・分納回数が増えた
・梱包が特殊だった
となれば、さらに倍増することも珍しくありません。

つまり、「たかが送料」とナメていると、年間で数十万円~数百万円、場合によっては数千万のロスになってしまうのです。

ここで大事なポイントをお伝えします。

契約書って、
「営業が取り交わしてくるもの」
「法務部がチェックするだけのもの」
「裁判の時に備えた証拠」
──そんなイメージを持っていませんか?

もちろんそれも正しいのですが、
資材担当者にとっては「業務効率化・コスト改善ツール」にもなるんです。

たとえば、

  • 送料負担を明確にする
  • 梱包仕様を標準化する(標準以外の梱包については追加費用であることを明記)
  • 納品場所を絞る

こういった工夫を契約書で取り決めておけば、
現場で毎回悩んだり、ムダなコストをかけたりせずに済みます。

「最初にきちんと決める」=「あとがラクになる」
これが、できる資材担当者の考え方です!

では最後に、実際にあった失敗パターンをご紹介します。

【失敗例①】送料込み前提で値切ったら…

「送料無料でこの価格ですよね?」
と何気なく値切ったら、
実は別途送料実費請求だった…。

結果、実質値引きゼロどころか割高取引になったケース。

🔵 教訓
→ 「送料込み」か「別途」か、最初にきちんと確認!

【失敗例②】通常便で送った精密機器が壊れた!

精密機器を普通の宅配便で送ってしまい、破損。
誰が責任を負うのかでもめにもめた…。

🔵 教訓
→ 特殊品・高額品は「梱包方法」「輸送方法」まで契約で明記!

この2つ、
どちらも資材担当者なら「自分にも起こり得る話」かと思われます。

今回のまとめです。

✅ 「送料負担」は契約書でしっかり確認・交渉する
✅ 特殊な輸送・梱包があるなら別途条項を設ける
✅ 業務効率・コスト削減の視点で契約を設計する
✅ 小さなコストも積み上げると無視できない額になる

送料は、単なる「お金の話」だけではありません。

  • 業務をラクにする
  • トラブルを防ぐ
  • 会社の利益を守る

そんな重要な要素なのです。

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