ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
1.出演概要
オンライン研修や企業の人材育成を手がける株式会社ビズアップ総研様のYouTubeメディア「BiZ ch.」に出演させていただきました。
今回は全4回シリーズの第3回です。生成AIで契約書を作成・チェックするときに、どこまで任せることができ、どこから人が判断しなければならないのかを解説しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 番組 | BiZ ch.「スペシャリストに聞く」 |
| シリーズテーマ | 多くの企業が見落としている「契約の空白」 |
| 第3回 | 生成AIで契約書を作る・チェックする際の注意点 |
| ゲスト | 大森靖之(行政書士大森法務事務所 代表) |
| 番組アンバサダー | 勝野みなみさん(ホリプロアナウンス室) |
| 制作・配信 | 株式会社ビズアップ総研様 |
| 形式 | YouTube動画・全4回シリーズ |
第1回では、契約書があるのに揉めてしまう原因を「契約の空白」という見方からお話ししました。
第2回では、業務範囲、報酬、契約期間などの条件が曖昧なまま仕事を始めると、クリエイターやフリーランスの仕事が赤字案件になりやすいことを解説しました。
第3回では、近年急速に身近になった「生成AI」を契約実務で使うときの注意点を取り上げています。
2.生成AIで契約書は作れるのか
ChatGPTをはじめとする生成AIに、
「業務委託契約書を作ってください」
と入力すれば、数秒でそれらしい契約書が出てきます。
文章も整っていますし、「損害賠償」「秘密保持」「契約解除」「合意管轄裁判所」といった、契約書らしい条項も一通り並んでいます。
では、その契約書をそのまま使ってもよいのでしょうか。
結論から申し上げると、生成AIは契約書作成の有力な補助ツールになりますが、出力された文章をそのまま実務で使うのは危険です。
生成AIは、契約書らしい文章を作ることは得意です。
しかし、自社が誰と、どのような仕事を行い、どこで利益を上げ、何を最も怖いと感じているのかまでは、こちらから伝えなければ分かりません。
契約書の形式は整っていても、自社の取引に必要な条件が抜け落ちている可能性があるのです。
3.AIが作った契約書にも「契約の空白」は残る
例えば、Webサイト制作の業務委託契約書を生成AIに作らせたとします。
一般的な条項は並んでいても、次のような実務上の条件まで、自動的に正しく盛り込まれるとは限りません。
- お客様が画像や文章を用意する期限
- 素材の提供が遅れた場合の納期延長
- 無料で対応する修正回数
- 追加料金が発生する作業
- サーバーやドメインの管理主体
- 納品後の保守対応
- 元データや著作権の取扱い
こうした条件は、法律の教科書を読むだけでは出てきません。
その会社の業務フローや料金体系、過去のトラブル、現場でのやり取りを知らなければ決められないからです。
生成AIは、入力された情報をもとに文章を作ります。裏を返せば、こちらが伝えていない情報は、契約書にも反映されません。
「生成AIが作ったから大丈夫」なのではなく、最初にどのような取引情報を与えたかによって、出力される契約書の品質は大きく変わります。
AIが作った契約書にも、人が気づいていない「契約の空白」が残る可能性があるのです。
4.生成AIは「答えを決める人」ではなく「判断材料を出す人」
生成AIは、契約実務において非常に便利です。
例えば、次のような使い方が考えられます。
| 活用場面 | 生成AIに頼めること | 人が判断すべきこと |
|---|---|---|
| 契約書の作成 | 条項案や構成のたたき台を出す | 自社の取引に合っているか |
| 契約書の確認 | 不利な条項や抜け漏れの候補を挙げる | どこまで受け入れ、交渉するか |
| 条文の理解 | 難しい文章をやさしく説明する | 説明が法的・実務的に正しいか |
| 修正案の検討 | 複数の修正文案を提示する | どの案を採用するか |
| 社内説明 | 条項の要約やチェックリストを作る | 自社の運用と一致しているか |
生成AIの強みは、短時間で多くの判断材料を出せることです。
一方で、最終的にどの条件を採用するか、そのリスクを会社として引き受けられるかを判断するのは人です。
例えば、生成AIが「損害賠償額を報酬の6か月分に制限する修正案」を出したとしても、その上限で本当に自社の事業が守れるかどうかは、取引金額、利益率、想定される損害などによって変わります。
AIは文章を作ってくれますが、その条件で契約を締結する責任までは負ってくれません。
だからこそ、生成AIは「答えを決めてもらう道具」ではなく、「判断材料を増やす道具」として使うことが大切です。
5.生成AIを使うときに確認したい4つのポイント
生成AIを使って契約書を作成・チェックする際は、少なくとも次の4点を確認してください。
① 取引の前提条件を具体的に伝える
単に「業務委託契約書を作ってください」と依頼するだけでは、一般的な雛形に近い文章しか出てきません。
当事者の立場、業務内容、報酬、納期、成果物、修正回数、検査方法、権利関係などを具体的に伝える必要があります。
契約書を作る前に、自社の取引の全体像を整理することが重要です。
② 出力された条文の根拠を確認する
生成AIは、もっともらしい文章を出力することがあります。
存在しない法律や古い制度を前提に回答する可能性もあるため、法律名、条文番号、制度の内容などは、必ず公的機関の一次資料で確認しなければなりません。
③ 秘密情報を安易に入力しない
契約書には、取引先の会社名、担当者名、金額、技術情報、個人情報などが含まれることがあります。
これらを生成AIへ入力する際は、利用しているサービスの規約、学習設定、社内ルールなどを確認してください。
必要に応じて会社名や金額などを匿名化し、秘密情報をそのまま入力しない工夫も必要です。
④ 最後は人が読んで判断する
生成AIの出力は、あくまでたたき台です。
契約書の内容が実際の業務フローと合っているか、現場で運用できるか、自社が負う責任の範囲は適切かを、人が確認する必要があります。
重要な取引や高額な取引については、必要に応じて専門家による確認を受けることも検討してください。
6.動画はこちらからご覧いただけます
今回の動画では、生成AIを使って契約書を作成・チェックするときに注意したいポイントを、実務の視点からお話ししています。
特に、次のような方にご覧いただきたい内容です。
- 生成AIで契約書を作ってみたい方
- AIによる契約書チェックを利用している方
- ネット上の雛形とAIの違いが分からない方
- 自社に法務担当者がいない中小企業の方
- 生成AIの回答をどこまで信用してよいか迷っている方
7.全4回のシリーズです
今回の出演は、全4回のシリーズとなっています。
1.契約書があるのに、なぜ揉めるのか~「契約の空白」という見方~
2.雛形を使っても抜けやすい3つの空白~業務範囲・金額・期間~
3.生成AIで契約書を作る・チェックする際の注意点
4.契約の出口設計~契約違反・カスハラ・過度な要求に備える~
次回の第4回では、契約違反、カスタマーハラスメント、過度な要求などがあった場合に、取引関係をどのように終了させるかという「契約の出口設計」を取り上げます。
このような貴重な機会をいただきました株式会社ビズアップ総研様、番組アンバサダーの勝野みなみさん、そして撮影・制作に携わってくださったスタッフの皆様に、改めて心より御礼申し上げます。

🔎 参考記事
ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
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