ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
1.出演概要
オンライン研修や企業の人材育成を手がける株式会社ビズアップ総研様のYouTubeメディア「BiZ ch.」に出演させていただきました。
全4回シリーズの最終回となる今回は、契約違反、代金の未払い、カスタマーハラスメント、過度な要求などがあった場合に、取引関係をどのように終了させるかという「契約の出口設計」を取り上げています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 番組 | BiZ ch.「スペシャリストに聞く」 |
| シリーズテーマ | 多くの企業が見落としている「契約の空白」 |
| 最終回 | 契約トラブルを防ぐ「出口設計」と取引相手の見極め方 |
| ゲスト | 大森靖之(行政書士大森法務事務所 代表) |
| 番組アンバサダー | 勝野みなみさん(ホリプロアナウンス室) |
| 制作・配信 | 株式会社ビズアップ総研様 |
| 形式 | YouTube動画・全4回シリーズ |
第1回では、契約書があるのに揉めてしまう原因を「契約の空白」という見方からお話ししました。
第2回では、業務範囲、報酬、契約期間などの条件が曖昧なまま仕事を始めると、クリエイターやフリーランスの仕事が赤字案件になりやすいことを解説しました。
第3回では、生成AIで契約書を作成・チェックするときに、どこまでAIへ任せ、どこから人が判断しなければならないのかを取り上げました。
最終回では、取引がうまくいかなくなったときに備えて、契約をどのように終わらせるのかを考えます。
2.契約は「始め方」より「終わり方」が難しい
新しい取引を始めるときは、お互いに前向きです。
「昔からの付き合いだから大丈夫」
「信頼できる人からの紹介だから問題ない」
「せっかくのご縁なので、細かいことは言わなくてもよいだろう」
このような雰囲気の中で、仕事が始まることも少なくありません。
ところが、代金の支払いが遅れる、当初の範囲を超える要求が繰り返される、担当者の言動が次第に強くなるなど、取引開始時には想定していなかった問題が起こることがあります。
共同事業やコラボ企画も同じです。
事業が失敗したときだけでなく、予想以上に成功したときにも、利益の分け方、顧客情報の取扱い、知的財産権の帰属などをめぐって揉める可能性があります。
人間関係は、始めるときよりも終わらせるときの方が難しいものです。
だからこそ、関係が良好な契約締結時に、
どのような場合に、どのような手続で取引を終了できるのか
を決めておく必要があります。これが、契約の「出口設計」です。
3.「払ってくれないのに解約できない」を防ぐ
例えば、取引先が代金を支払ってくれない状態が続いているにもかかわらず、契約書には中途解約や契約解除について十分に書かれていないとします。
解除条項がなくても、債務不履行の内容などによっては法律に基づいて解除できる場合があります。
しかし、どの程度の遅延で、どのような通知を行い、いつ契約が終了するのかが明確でなければ、現場では判断に迷います。
支払いがないままサービスだけを提供し続け、未回収額が増えてしまうこともあります。
このような事態を防ぐには、契約書で少なくとも次の点を整理しておくことが重要です。
- 代金の支払期限
- 支払いが遅れた場合の督促方法
- サービスや業務を一時停止できる条件
- 相当期間内に支払いがない場合の解除
- 重大な契約違反があった場合の即時解除
- 契約終了時の未払金や成果物の取扱い
契約解除は、相手を罰するためだけの制度ではありません。
損失が広がる前に取引を止め、自社の経営や現場を守るための仕組みでもあります。
4.禁止事項と解除条項が自社とスタッフを守る
契約の出口設計は、代金の未払いだけの問題ではありません。
現場では、取引先や顧客から次のような行為を受けることがあります。
- 暴言、威圧的な言動、脅迫
- 長時間にわたる拘束や執拗な連絡
- 契約範囲を超える無償対応の要求
- 従業員個人への攻撃やSNSへの投稿
- 業務を妨げるような過度な要求
- 他の顧客や利用者へ迷惑を及ぼす行為
このような行為が起きてから、契約書に何も書かれていないことに気づくケースがあります。
禁止行為をあらかじめ具体的に示し、違反があった場合にサービスの停止や契約解除ができるようにしておけば、担当者が個人の判断だけで対応を抱え込まずに済みます。
契約書や利用規約は、会社のためだけにあるものではありません。
実際に顧客と接する従業員やスタッフを守るためのルールでもあります。
ただし、すべての違反について直ちに解除できる形にすればよいわけではありません。
通常の契約違反であれば、まず是正を求め、一定期間内に改善されない場合に解除する設計が考えられます。一方、暴力、脅迫、重大な信用毀損など、関係の継続が難しい行為については、即時解除を検討します。
行為の重大性に応じて、警告、業務停止、解除という段階を設けることが実務的です。
なお、消費者向けの利用規約では、事業者側に一方的な権限を与える条項にならないよう、消費者契約法などとの整合性にも注意する必要があります。
5.契約書は取引相手を見極めるリトマス試験紙
契約書は、トラブルが起きた後に責任を追及するためだけの文書ではありません。
契約条件を提示したときの反応から、取引相手の考え方を知ることもできます。
例えば、業務範囲、支払期限、禁止事項、契約解除の条件について合理的な説明をしているにもかかわらず、
「信用していないのか」
「契約書なんて必要ない」
「何かあったら、そのとき考えればよい」
と強く反発する相手とは、取引開始後にもルールをめぐって問題が起こる可能性があります。
もちろん、契約書の修正を求めること自体が問題なのではありません。
契約条件について意見を出し合い、合理的な着地点を探すことは、むしろ健全な契約交渉です。
重要なのは、相手が自社の事情だけを押し通そうとしていないか、ルールを守る姿勢があるか、問題が起きたときに話し合える相手かを確認することです。
契約書は、取引相手を見極める「リトマス試験紙」にもなります。
契約締結前に確認したいポイントは、次の5つです。
- 誰が、何を、どこまで行うのか
- 代金はいくらで、いつ支払うのか
- 契約期間と更新方法はどうなっているか
- どのような行為を禁止するのか
- 問題が起きたときに、どのように取引を終了するのか
契約書は、トラブルの後始末をするためだけのものではありません。
経営者が決めた取引方針を、現場で実際に使えるルールへ落とし込むための道具なのです。
6.動画はこちらからご覧いただけます
今回の動画では、契約の「終わり方」を決めておくことの重要性について、カスハラ対策、共同事業、ホテルの禁止事項などの身近な事例を交えながらお話ししています。
特に、次のような方にご覧いただきたい内容です。
- 代金を支払ってもらえず困った経験がある方
- 契約をどのように終了させればよいか分からない方
- 顧客からの過度な要求やカスハラに悩んでいる方
- 従業員やスタッフを守る契約ルールを整備したい方
- 共同事業やコラボ企画を始めようとしている方
- 取引相手を契約前に見極めたい方
7.全4回のシリーズです
今回の出演は、全4回のシリーズです。
1.契約書があるのに、なぜ揉めるのか~「契約の空白」という見方~
2.雛形を使っても抜けやすい3つの空白~業務範囲・金額・期間~
3.生成AIで契約書を作る・チェックする際の注意点
4.契約の出口設計 ~契約違反・カスハラ・過度な要求に備える~
シリーズを通してお伝えしたかったのは、契約書は、法律用語を並べただけの文書ではないということです。
取引の入口から出口までを整理し、経営者の判断と現場の運用をつなぐものです。
そして、契約書に書かれていない「契約の空白」へ目を向けることが、トラブルを未然に防ぎ、自社の利益とスタッフを守ることにつながります。
このような貴重な機会をいただきました株式会社ビズアップ総研様、番組アンバサダーの勝野みなみさん、そして撮影・制作に携わってくださったスタッフの皆様に、改めて心より御礼申し上げます。
🔎 参考記事
ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
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