ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに:「契約書って、読む気がしない…」と思っていませんか?
営業職として働きはじめると、避けて通れないのが「契約書」の存在です。
でも正直……
「同じ日本語のはずなのに、なんでこんなに読みにくいの?」
「一応目を通してるけど、正直よくわかってない」
「リーガルチェックって法務に任せとけばいいんじゃないの?」
……そう思っていませんか?
でも、取引の最前線に立つ営業こそ、実は契約書の“基本”を押さえておくべきポジションです。
本記事では、「契約書=怖い」「契約書=わからない」という印象を少しでも和らげるために、
その“読みにくさの正体”と、現場で押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。
小説と契約書は“目的”が違う
私たちは普段、メール、チャット、小説、WEB記事など、さまざまな“日本語の文章”に触れています。
でも契約書は、それらとは根本的に役割が違うんです。
小説:感動・共感・想像を引き出す
契約書:トラブルが起きたときに「言った言わない」を防ぐ
契約書の最大の目的は、
私たち専門家の言葉で「解釈に疑義を生じさせないようにすること」
これをわかりやすく言えば「見解の違いであとで揉めないように、きっちりハッキリ書いておくこと」です。
たとえば、営業現場でこんなことはありませんか?
「あの商品(中古品)って“きれいな状態”で納品してくれるんだよね?」
「え? 中古品なのに…“きれい”の定義ってどこまで?」
こうした“感覚の違い”が、後々のクレームや契約トラブルにつながります。
【具体例】「きれいな商品」って、どこまでが“きれい”?
たとえば、契約書に次のような条文があったとします。
売主は買主に、きれいな商品を引き渡すものとする。
営業としては、「きれいに決まってるでしょ」と思うかもしれませんが……
“きれい”の感覚って人によってバラバラです。
- ミリ単位の傷も許されないこと?
- 色あせていないこと?
- 箱付きで未使用品のこと?
これが明確に定まっていないと、
あとから「話が違う!」と揉める原因になります。
▼ 契約書ではこう書く!
売主は買主に、別紙仕様書に定めたとおりの商品を引き渡すものとする。
つまり、抽象的な言葉を避けて、仕様書や図面で「どういう状態の商品か」をちゃんと定義しておくのです。
これが“契約書っぽい言い回し”の理由なのです。
「同じこと2回言ってない?」→ 実は意味がある
契約書の読みづらさには、こんなものもあります。
甲および乙は、協議の上、合意により本契約を変更することができる。
「協議」と「合意」って似た言葉なのに、なんで2回言うの?と思いますよね。
でも実は、
- 協議:話し合うこと(意見交換)
- 合意:お互いが同じ内容でOKとすること(契約成立)
……という違いがあります。
手続きの段階をハッキリ分けるために、こうした“重ね表現”が使われているのです。
条件が長いのも、“漏れなく”書くため
もうひとつ、「一文がやたら長い」という特徴もあります。
たとえば:
乙が以下のいずれかに該当する場合、甲は書面による通知をもって本契約を解除できる。
こうした条文には「条件」と「解除手続き」が両方含まれています。
現場では、「どのタイミングで解約できるのか」などを確認する際に、とても重要です。
営業のあなたが「このケースならキャンセルできるかも」と思った時、
こうした条文にどう書かれているかが判断の拠り所になります。
「契約書なんて法務に任せればいい」はもう古い?
近年では、取引のスピードアップが重視されており、
営業がドラフト(契約書のたたき台)を出す場面も増えています。
そのとき、少しでも契約書に慣れていれば、
・交渉がスムーズになる
・法務への相談が的確になる
・信頼される営業としてステップアップできる
という“プラスの連鎖”が起きます。
逆に、「契約書を読めない営業」「契約書の内容を的確な表現でお客様や上司に説明できない営業」は、
「この人に任せて大丈夫かな?」と、社内外からの評価が下がってしまうことも。
契約書の“読み方の型”を持とう
読みやすくするコツは、“文章を日本語として読む”のではなく、設計図として捉えることです。
以下のような“型”を押さえると、グッと理解しやすくなります。
✅ 読み方のポイント
- 「定義」は冒頭にある → 用語の意味を押さえる
- 主語と述語を探す → 誰が何をするのか明確に
- 「例外条件」や「免責(責任の免除)」の書きぶりに注意
- 仕様書・別紙との関係も確認する
特に、「仕様書で定義する」といった条文は、納品トラブルや品質保証の交渉で役に立つ情報です。
おわりに:契約書を“味方”につける営業へ
契約書は、営業にとって「面倒で邪魔な書類」ではなく、
“自分の提案を守ってくれる”味方でもあります。
読みづらく見えるのは、揉めないように細かく書いているから。
だからこそ、ちょっとしたルールを理解するだけで、だいぶ読みやすくなります。
「契約書は苦手」と感じている営業パーソンこそ、
いま一度、その“読み方の型”を身につけてみませんか?
ご質問受付中!
足下を固め、自分自身を守り、そして、「成し遂げたいこと」や「夢」の実現に近づけるための契約知識について、このブログや、音声配信「契約書に強くなる!ラジオ」でお伝えしていきますので、今後ともご期待、ご支援いただければ幸いです。
「こんなことに困っている!」など、契約書に関するご質問がありましたら、ブログ等で可能な限りお応えしますので、上記「お問い合わせ」より、お気軽にお寄せください。
また、商工会議所などの公的機関や、起業支援機関(あるいは各種専門学校)のご担当者で、
「契約知識」に関するセミナー等の開催をご検討されている方
講師やセミナー企画等の対応も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
最後まで、お読みくださりありがとうございました。
この記事へのコメントはありません。