ビジネス法務

【契約書のトリセツ】「自分から契約解除」するときの方法―角を立てず、確実に抜けるための実務ポイント

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.自分から契約解除するのは問題ないのか

先日、以下のようなご質問をいただきました。
こちらについて現段階の私なりの見解をまとめておきたいと思います。

「フリーランスでWeb制作をしています。契約書には“2週間前に書面で通知すれば解約可能”とありますが、

・メールは書面にあたるのか?
・テンプレはあるのか?
・相手に悪い印象を与えずに辞めるにはどうすればいいのか?

より良い条件の仕事が決まったので、自分から契約解除したいです。」

フリーランスの方が自分から契約を終了したいとき、どう動くのが正解か?

  • 書面とは何か
  • どのように伝えるべきか
  • 関係を悪化させずに抜けられるのか

実務では非常によくある悩みです。


2.メールでも「書面」として機能するのか

結論から言います。
上記のケースでは、契約書に従い「事前に」「証拠が残る形で」通知することとなります。

ここで一点、重要な前提があります。
契約書に「書面」とある場合、一般的には紙媒体を前提とした表現と解されることが多いです。
電子メールでの対応が認められるケースもありますが、
重要な法的意思表示に解釈の余地を残してしまうことになるため、おすすめできません。

こういったときに迷わないよう、「書面の範囲にメールは含まれるか」は、
契約締結のときに確認しておくのがベストです。
いざ解除しようというタイミングで相手に確認を取るのは現実的ではありません。


3.やり方を間違えるとトラブルになる

実務でよくある失敗パターンです。

  • LINEや口頭だけで「辞めます」と伝える
  • 契約書を確認せずに自己判断で抜ける
  • ギリギリになって突然伝える

こうなるとどうなるか。

  • 「そんな話は聞いていない」と言われる
  • 報酬トラブルになる
  • 無駄に関係が悪化する

つまり、やり方を間違えると“普通の契約終了”が“トラブル案件”に変わります。


4.契約解除は「感情」ではなく「契約処理」

契約解除は「感情の話」ではありません。完全に“契約処理”です。

今回の条項はこうです。

「2週間前までに書面で通知すれば解除可能」

これは裏を返すと、

  • 2週間前
  • 書面

この2つを満たせば、あくまで契約上は理由は問われない設計です。
つまり、 辞める理由に対する説明責任は発生しないとも言い換えられます。

長く実務を見ていると感じるのですが、契約の終わらせ方に、その人のビジネスの質が出ます。

きれいに終われる人は、次の仕事でも信頼されます。
一方で、終わり方が曖昧だったり、ぐずぐずしてしまったケースは、
後からトラブルになることが少なくありません。

正確な統計を取っているわけではないのですが、実務感覚としてはかなり一貫しています。


5.スマートな進め方(3ステップ)

① 事前に意思を伝える(正式通知とは別に、チャットや口頭で一言入れておく)
② 契約書に書かれた形式で正式通知(証拠化)
③ 契約終了日まで通常対応

正攻法過ぎると感じるかもしれませんが、この流れが最も摩擦が少ないです。

■ 書面テンプレート

実務では、以下のような形式で通知するケースが一般的です。

拝啓
平素より大変お世話になっております。

さて、202○年〇〇月〇〇日付にて締結いたしました業務委託契約書につきまして、当該契約書第〇条の定めに基づき、本書面をもって契約終了の通知を申し上げます。

契約書の定めに従い、本通知から2週間後である〇月〇日をもって契約終了とさせていただきます。

これまでのご厚情に心より感謝申し上げますとともに、契約終了日までの期間につきましては、引き続き誠実に業務対応させていただきます。

何卒よろしくお願い申し上げます。

敬具

  • ※注意点
  • このテンプレートはあくまで参考です
  • 契約書の条項番号・終了日は必ず実際の内容に合わせてください
  • 重要な取引や金額が大きい案件については、個別の法的判断が必要になる場合がありますので、専門家への確認を検討することをおすすめします

■ 角を立てない伝え方

相手への伝え方に正解はありません。
契約処理として淡々と進めることが、結果的に最もスマートな対応です。


6.まとめ

■ トラブルなく契約を終えるためのチェックリスト

  • 契約解除は「契約処理」である
  • 契約書の条項に従えば問題ない
  • 「書面」の範囲は契約締結時に確認しておく
  • 重要なのは証拠性
  • 理由は不要(あえて言わない方がスムーズ)
  • 事前一言+正式通知がベスト

契約の終わらせ方に、その人のビジネスの質が出る。
長く実務を見ていると、そう感じる場面は決して少なくありません。


🔎 参考記事

ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。

また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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