ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)/ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに:開業して最初に報酬が生まれた瞬間
私が開業して、初めてお金をいただいた仕事。
それは、デザイナーの方から依頼された業務委託契約書(受託側)の作成でした。
右も左もわからない中、依頼をもらえたこと自体がありがたく、ドキドキしながら打ち合わせに臨んだのを今でも覚えています。
そして、その場で投げかけられた、ある一言が今の私の考え方の原点になっています。
「売れるデザインって言われるんですけど、契約書も同じですか?」
その方はこう言いました。
「我々の業界では『売れるデザインを考えてくれ』ってよく言われるんですよ。
契約書でも、同じことが言えるんですか?」
まるで禅問答のような問いでした。
最初は戸惑いましたが、これが後に私にとって非常に重要なテーマになります。
「売れる契約書=儲かる契約書とは何か?」という問いです。
「儲かる契約書」はキャッシュインとキャッシュアウトの設計書
私がたどり着いた結論はシンプルでした。
儲かる契約書とは、キャッシュイン(収入)とキャッシュアウト(支出)の仕組みが明確に設計されている契約書のこと。
契約書は法律文書である前に、「お金の流れをコントロールするツール」でもあります。
そして、その設計次第で利益が変わる。つまり「儲け」そのものに直結するのです。
1. キャッシュインを明確にする:報酬・支払条件の設計
まず重要なのが、お金を受け取る条件=キャッシュインの設計です。
- 報酬額はいくらか
- 支払期日はいつか
- 前払いか、分割払いか、納品後払いか
- 成果物の基準は何か(=検収基準)
これらが曖昧なまま契約書を交わすと、**「納品したのに支払ってもらえない」**というトラブルに発展しかねません。
契約書の段階で、誰が読んでも明確な「お金の入り方」を定義しておく。
これが、儲かる契約書の第一歩です。
2. キャッシュアウトの上限を明確にする:契約不適合責任・損害賠償
次に重要なのが、万が一の支出=キャッシュアウトのリスク設計です。
- 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の期間と範囲
- 損害賠償の責任上限(例:報酬総額を上限とする)
- 間接損害や逸失利益に対する免責条項
このように、万が一トラブルが起きた場合の「最大損失」をコントロールしておくことは、利益を守るために極めて重要です。
契約書によって「ここまでしか責任を負いません」という線を引くことで、予測できない出費=キャッシュアウトのリスクを最小限に抑えることができます。

契約書は経営ツールである
「売れるデザインって言われるけど、契約書にもそういうのってあるんですか?」
開業してすぐのあの一言。
正直、あの時は明確な答えが出せませんでした。
でも今なら言えます。
はい、契約書にも「儲かる契約書」はあります。
おわりに:儲かる契約書で、ビジネスはもっと強くなる
契約書というと、どうしても「揉めないための保険」と思われがちです。
しかし実際は、それだけではありません。
報酬の設計、リスクの管理。
そのすべてを通じて、ビジネスを前に進めることができる。
契約書は、経営のための戦略ツールなのです。
デザインが売上に貢献するように、
契約書も利益に貢献できる。
これからも、そんな契約書をつくり続けていきたいと思います。
音声解説
音声配信アプリstand.fm「契約書に強くなるラジオ」では、上記についてのコンテンツも公開しております。
▽音声をお聴きになるには、以下をクリックください(音声配信アプリstand.fmへ)。
ご質問受付中!
足下を固め、自分自身を守り、そして、「成し遂げたいこと」や「夢」の実現に近づけるための契約知識について、このブログや、音声配信「契約書に強くなる!ラジオ」でお伝えしていきますので、今後ともご期待、ご支援いただければ幸いです。
「こんなことに困っている!」など、契約書に関するご質問がありましたら、ブログ等で可能な限りお応えしますので、上記「お問い合わせ」より、お気軽にお寄せください。
また、商工会議所などの公的機関や、起業支援機関(あるいは各種専門学校)のご担当者で、
「契約知識」に関するセミナー等の開催をご検討されている方
講師やセミナー企画等の対応も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
最後まで、お読みくださりありがとうございました。
この記事へのコメントはありません。