ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
秘密保持契約(NDA)は、
ビジネスの最初に結ばれることが多い一方で、
「とりあえず雛形で」「前回と同じ内容で」
と、深く考えられないまま使われがちな契約でもあります。
しかし、NDAは単なる形式的な書類ではなく、
その後の取引や情報の扱い方を左右する重要な土台です。
この「NDAのトリセツ」シリーズでは、
一般論にとどまらず、実務の現場で本当に考えるべきポイントを、
一つずつ整理していきます。
1.NDAの「存続期間」は何年が正解なのか?
秘密保持契約(NDA)では、
「本契約終了後も●年間存続するものとする」
という条文をよく見かけます。
では、この 「●年」 は何年が妥当なのでしょうか。
専門書やネットでは、
「2〜5年程度が相場」と説明されることが多いですが、
実務ではそれだけで判断できない場面も少なくありません。
2.年数に正解はない。決め方が重要
結論から言えば、
NDAの存続期間に明確な正解はありません。
重要なのは、
- なぜその年数にしたのか
- どんな情報を想定しているのか
- その情報がいつまで価値を持つのか
こうした点を踏まえて、
自分の取引に即して考えられているか です。
3.「相場だから」で決めてしまう
実務でよくあるのが、
- 前回の契約と同じ年数にする
- 雛形に書いてあった期間をそのまま使う
- 深く考えず「3年」にしておく
といった対応です。
これ自体が直ちに間違いというわけではありませんが、
情報の内容や取引の性質によっては、
長すぎる・短すぎる というズレが生じることもあります。
4.「契約期間」と「存続期間」は別物
ここで整理しておきたいのが、
契約期間 と 存続期間 の違いです。
- 契約期間
情報交換や検討を行う期間(例:半年、1年など) - 存続期間
契約が終了した後も、秘密保持義務が続く期間
NDAでは、この 存続期間 が、
実務上のリスクや将来の事業活動に影響を与えます。
情報の陳腐化が早い分野なのか、
長期間にわたって価値を持ち続ける情報なのか。
その見極めが欠かせません。
5.存続期間の設計例
実務では、まず
秘密情報を一律の「契約期間」と「存続期間」で扱う 形が、
もっとも分かりやすく、運用もしやすい設計です。
そのうえで、
どうしても情報の重要度に差をつけたい場合には、
応用例として、次のような条文を置くことも考えられます。
第○条(存続期間)
1.本契約に基づく秘密保持義務は、本契約終了後 3年間 存続するものとする。2.ただし、技術上又は営業上特に重要な情報 の取扱いについては、
秘密情報の開示前に、その存続期間を含め別途協議のうえ定めるものとする。
このように、
契約書の段階ですべてを決め切ろうとせず、
実際に情報を開示する場面で扱いを決める余地を残す
という設計も、実務では一つの考え方です。
6.まとめ
秘密保持契約は、経営の4要素(人・モノ・カネ・情報)のうち、
「情報」という経営資源を守るための重要な契約 です。
平均的な年数や、
本やネットに書いてある説明だけに頼るのではなく、
- どんな情報を扱うのか
- その情報はいつまで守る必要があるのか
現場全体を捉えたうえで、
自分の頭で考えて存続期間を設定すること が重要です。
年数そのものよりも、
その設計が自分の取引に合っているか。
そこを意識するだけで、NDAの実務レベルは確実に上がります。

【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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