ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに
業務委託契約は、企業と外部の事業者・フリーランスなどが業務を分担・協力する際に不可欠な契約書です。
ところが、「契約書をちゃんと作ったのにトラブルになった」という声も少なくありません。実は、その多くは“契約書の中身”に原因があります。
今回は、契約書専門の行政書士として、多くの事例を見てきた立場から「業務委託契約で必ず確認しておきたい7つのポイント」を解説します。
中小ベンチャー企業やスタートアップ、フリーランスとの取引を検討している方にとって、実践的な内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
業務委託絵=契約書が商品のようなもの。だからこそ作り込みが重要
業務委託契約は、目に見える「モノ」の取引ではなく、成果物やプロセスを含む「サービス」の提供を目的としています。
だからこそ、契約書は単なる「お約束文書」ではなく、目に見えないサービスの内容を明確化し、形にする“設計図”のようなものです。契約書が商品のようなものと言っても決して大げさでありません。
たとえば、製品の納品であれば実物を見て判断できますが、業務委託のようなサービスは、「どのような内容で」「どこまで行うのか」を事前に文書で設計しておかないと、後から「やった・やらない」「そこまで頼んでいない」などのトラブルになりがちです。
「契約違反かどうか」も、契約書に書かれた内容とのズレがあるかどうかで判断されます。
つまり、契約書の完成度が、その後の信頼関係や業務のスムーズさ、損害回避に直結するということです。
1. 委託業務の内容と範囲をできるだけ正確に書く
業務委託契約でもっともトラブルが起きやすいのが、「どこまでが仕事の範囲なのか分からない」という見解の相違です。口頭では伝えたつもりでも、書面にしていなければ「そんなことは聞いていない」と言われかねません。
たとえば、部品製造を委託する場合には、以下のような点を具体的に書いておきましょう。
- 仕様書に基づく製造か?
- 納期や納品頻度は?
- 不良品が出た場合の責任は?
- 単価はいくらか?税込か税抜か?
- 支払時期や方法はどうするか?
これらは契約書本文に書ききれない場合、「別紙」や「仕様書」「図面」などの添付が有効です。
2. 包括的な表現は避ける
契約書に「その他〇〇に関連する業務一切」や「必要な一切の業務」といった記載を見かけますが、これは非常に危険です。業務範囲が広すぎて曖昧になり、トラブルの原因になります。
相手方との合意形成を丁寧に行い、できる限り具体的に記載することで、将来の誤解や紛争を防げます。
3. 対価(報酬額)は税込 or 税抜かを明示する
対価が記載されていても、「税込か税抜か」が明記されていない契約書を多く見かけます。
例えば「100,000円」とだけ書かれていた場合、受け取る側と支払う側で“税の有無”の認識にズレが出る可能性があります。
「税込〇円」または「〇円(税別)」のように、明確に記載しましょう。
4. 支払条件はキャッシュフローに直結
支払時期や方法(振込、手渡しなど)、締日・支払日の明示は、受託者のキャッシュフローに大きく影響します。
例えば「末締め翌々月末払い」のような条件は、特にフリーランスや中小ベンチャー企業にとって資金繰りの圧迫原因になることもあります。
また、振込手数料の負担(どちらが負担するのか)も明記しておくと安心です。
5. 諸経費の取り扱いは明記しておく
意外と見落とされがちなのが、交通費・宿泊費・材料費・人件費などの諸経費の負担先です。
契約締結時には「そのとき相談しましょう」で済まされがちですが、後で「こんなに請求されると思ってなかった」というトラブルに発展することも。
委託者負担、受託者負担、都度協議など、あらかじめルールを決めておくのが安全です。
6. 再委託の可否は明確に
受託者が業務を下請けやフリーランスなどに再委託(外注)することを想定する場合は、契約書にルールを定めておきましょう。
主なパターンは次の3つです。
- 全面禁止
- 委託者の事前承諾があれば可能
- 委託者への事前通知のみで可能
業務の性質や情報管理の重要性に応じて、適切な条件を選びましょう。
7.報告義務を定めておくと安心
委託業務の進捗状況を、委託者側がしっかり把握できるようにするためには、「定期的な報告義務」の明記が有効です。
たとえば、
- 月1回の報告書提出
- メールでの進捗連絡
- 定例の打ち合わせ実施
など、頻度や手段まで記載しておくことで、トラブルの未然防止につながります。
まとめ:契約書は「信頼を形にするツール」
業務委託契約書は、単に法的リスクを避けるための道具ではありません。相手との信頼関係を築くための“設計図”です。
書面にしておけば「言った/言わない」の水掛け論を避けられますし、双方が安心して業務に取り組むことができます。
契約書の内容に不安がある場合は、お気軽に専門家にご相談ください。あなたの事業にぴったり合った、実務的で“使える契約書”を一緒に作っていきましょう。
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