ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
契約書作成のコアスキルとは?〜「会社の考え方」を言葉にして伝えるチカラ〜
契約書というと、「むずかしそう」「専門用語ばかり」というイメージがあるかもしれません。
たしかに、契約書には法律の言葉がたくさん出てきます。でも、実はその中には会社の考え方や大切にしていることが込められています。
私は、法務の仕事を11年間経験したあと、行政書士として多くの企業の契約書づくりをお手伝いしています。
その中で気づいたのが、契約書は“経営方針”を外に向けて伝える文章だということです。
この記事では、契約書をつくるときに本当に大切なスキル、つまり「コアスキル」について、やさしく説明していきます。
契約書は「会社の考え」を伝える外向けの文書
契約書は「お金をいつ払うか」「納品日はいつか」「トラブルがあったらどうするか」など、会社どうしで守るべきルールが書かれた文書です。
でも、そのルールの中には、実はその会社がふだんから大切にしている経営の考え方が表れていることが多いんです。
たとえば、
- 「納期は守ってほしいけど、ちょっとした遅れなら相談してもらえばOK」
- 「お金の支払いはできるだけ早くしてほしい」
- 「トラブルになる前に、お引き取り願いたい」
こういう“会社の方針”は、契約書のあちこちに反映されています。
つまり、契約書は、会社の内面(考えや方針)を、外向けに伝える文書といえます。
契約書づくりは「話を聞くところ」から始まる
では、実際にどうやって契約書を作っていくのでしょうか?
私が普段おこなっている流れをご紹介します。
ステップ①:まず「話を聞く」
最初にやるのは、会社の人の話をよく聞くこと。
「どんな仕事をするのか?」「相手はどんな会社か?」「何を心配しているか?」など、色んな角度から話を聞きます。
このとき大切なのは、会社の本音や方針を聞き取ることです。
契約書はその“想い”が出発点になります。
ステップ②:「契約の設計図」を考える
話を聞いたら、次は「どういう契約内容にするのがよいか?」を考えます。
たとえば、
- 成果物の引き渡しをどう決めるか
- 報酬(お金)の支払いタイミングはいつにするか
- トラブルのときは裁判?それとも話し合い?
こうした内容を組み立てていくのが「契約の設計図」です。
会社の考え方や取引の実態に合った内容にすることが大切です。
ステップ③:情報を集めてたたき台を作る
つぎに、契約書の「たたき台(最初の案)」を作ります。
このとき、「ひな形(テンプレート)」を使うこともありますが、あくまでベースにすぎません。
本当に大事なのは、会社ごとの状況や考え方をちゃんと取り入れることです。
「納品物って何?」「納期は?」「報酬はいくら?」など、必要な情報を集めて、言葉にしていきます。
ステップ④:相談者に説明する(伝わるように話す)
たたき台ができたら、それを相談者に説明します。
ここで大切なのは、ただ「説明する」のではなく、「わかるように伝える」ことです。
たとえば、
「この条文は“もし〇〇が起きたとき”のルールです」
「ここに書いておくことで、あとでトラブルを防げますよ」
といったふうに、わかりやすく説明します。
言葉に気をつけることで、相手の納得度が大きく変わります。
ステップ⑤:もう一度見直して完成へ
相談者から「ここを変えたい」「この内容でいいと思う」といった意見をもらったら、再編集します。
このやりとりを繰り返すことで、だんだんと「その会社に合った契約書」が完成していきます。
最終的には、**「ちゃんと伝わる、自分たちの考えを反映した契約書」**になるわけです。
このスキルは、いろんな仕事にも使える
この「聞く→考える→言葉にする→伝える→直す」という流れは、契約書づくりだけでなく、他の仕事にも使えます。
たとえば…
- セミナーや研修でのスライド
- SNSでの発信
- 会社でのルールやマニュアルづくり
- ラジオ番組などでの話し方
全部、「相手のことを考えて、伝わるように言葉を選ぶ力」が大事です。
だから契約書づくりのスキルとは、“伝える力”そのものといえます。
まとめ:契約書は“会社の考え”を伝えるための文書
契約書は、ただの紙ではありません。
私は、契約書のことを「会社の考え方や方針を、外の人に伝えるための文書」だと考えています。
その中には、「どこまで責任を持つのか」「報酬はどう支払うか」「何かトラブルがあったときの対処はどうするか」といった、会社の大事な方針がギュッと詰まっています。
そしてもうひとつ大切なのが、契約書に書かれる言葉は、ビジネスの世界で通じる「共通言語(きょうつうげんご)」のようなものであること。
たとえば、「損害賠償」「契約解除」「契約不適合責任」など、意味がきちんと決まっていて、誰が読んでも同じように理解できるようになっています。
だからこそ、会社の考えをそのままの言葉で書くだけではなく、共通言語としての法律用語に置きかえる作業がとても大切なのです。
それによって、誤解がなくなり、安心して取引できるようになります。
つまり、契約書を作るということは、「自分たちの考えを、相手にわかる言葉で伝える」こと。
そのためには、ふだんから「うちの会社は何を大事にしているのか?」をしっかり言葉にしておくことが、いい契約書づくりの出発点になるのです。
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