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契約書が不利だと思ったら?相手に修正してもらう交渉のコツとマナー

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

契約書が不利だと思ったら?相手に修正してもらう交渉のコツとマナー【2025年版】

仕事で契約書に目を通すとき、こんなことを思ったことはありませんか?

「この契約書、自分たちに不利じゃない?」

「こんな条件で引き受けて本当に大丈夫かな…」

特に、取引相手が大手企業だったり、業界の慣習が強かったりすると、「言いづらいな…」と思ってしまいがちです。
ですが、そのままサインしてしまって、後から大きなトラブルになった事例も少なくありません。

本記事では、「契約書の内容が不利かも…と思ったとき、どう交渉すればいいのか?」を、法律に詳しくない方でもわかるように丁寧に解説します。


目次

  1. 契約書の修正ってできるの?
  2. 「対案を出してください」と言われたときの考え方
  3. 交渉をあきらめる前に知ってほしいこと
  4. 修正案はどうやって作ればいい?
  5. 「差分」の表示(変更履歴)はマナーです
  6. 契約交渉でよくあるパターンと対処法
  7. 交渉を成功させる3つのコツ
  8. 契約交渉は“営業活動の一部”という考え方
  9. まとめ:いい契約は、いい仕事につながる

「契約書の文言は変えてはいけない」と思っている方もいますが、これは誤解です。

契約書はあくまで両者の合意のもとに成立するもの
つまり、「この条件はちょっと厳しいな」と感じたら、修正の相談をするのは当然の権利です。

実際、多くの企業では、契約書のやり取りの中で何度もドラフト(案)をやり取りし、微調整を重ねています。

契約書の内容に疑問をもって先方に相談すると、こんなふうに返されることがあります。

「どこを、どう直したいのか理由を添えて教えてください」

これは決して冷たい態度ではなく、ビジネスの常識に沿った丁寧な対応です。

このときに、「えー、理由まで考えるのは面倒」と感じてしまい、あきらめるのはもったいない。
交渉を始める入り口に立ったと思って前向きに捉えましょう。

「相手が大きな会社だから、こっちの要望なんて通らないよ…」と、最初からあきらめていませんか?

でも、実際のところは、

  • 具体的に理由を添えて説明すれば、修正に応じてくれる
  • そもそも契約書は交渉することを前提としている

というケースも多いのです。

価格交渉や納期調整と同じように、契約条件も「相談して調整するもの」と考えましょう。

ここで大切なのが、「対案」と「理由」をセットで伝えること。

【例】

✕「この条文は削除してください」
◎「この条文のままだと、万が一トラブルが起きたときに、こちらがすべて責任を負う形になります。リスクのバランスを取るために、双方責任としたいです。」

このように、なぜ変更が必要なのか、具体的な理由を伝えると交渉が通りやすくなります

修正した契約書を相手に渡すときは、変更した部分がどこなのか、すぐに分かるようにしておくことが大切です。

そのときに役立つのが、Microsoft Wordの「変更履歴」機能。

  • 赤文字で変更点を表示 → レッドライン版(redline)
  • すべて反映済みで読みやすい完成形 → クリーン版(clean)

この2つをセットで提出するのがビジネスマナー。
「親切だな」と思われるだけでなく、信頼感にもつながります。

契約交渉では、次のようなやりとりがよくあります。

よくある条件

  • 支払サイトが長すぎる(例:90日後)
  • 一方的な損害賠償責任
  • 業務範囲が曖昧

対処のコツ

  • 業界平均や他社事例を根拠に出す
  • 取引金額や期間のバランスを意識
  • 「お互い様」のスタンスを忘れない

  1. 感情的にならない
     →あくまで事実ベース・冷静に。
  2. 交渉材料を用意する
     →業界慣習、過去事例、リスクの見積もりなど。
  3. 落としどころを探す
     →すべて通すのではなく「譲れるところ/譲れないところ」を整理する。

契約交渉は、ビジネスの「最後の詰め」ではなく、営業の一部です。

  • 納期の調整
  • 価格の交渉
  • 契約条件の調整

これらはすべて「対話と合意」の積み重ね。
契約書もその延長線上にあると考えれば、「特別なもの」「怖いもの」ではなくなります。

契約書は、ただの書類ではありません。
**ビジネスの土台となる「約束の証」**です。

相手の言いなりになってしまって、後からトラブルになるよりも、
最初にきちんと話し合っておくことで、良い関係・良い仕事が生まれます

  • 内容に納得できないときは、理由を添えて変更を申し出る
  • 変更履歴を使って、分かりやすく伝える
  • 自分で難しいと感じたら、専門家に相談する

このような流れで進めていけば、きっと自信を持って契約交渉ができるようになります。

足下を固め、自分自身を守り、そして、「成し遂げたいこと」や「夢」の実現に近づけるための契約知識について、このブログや、音声配信「契約書に強くなる!ラジオ」でお伝えしていきますので、今後ともご期待、ご支援いただければ幸いです。

「こんなことに困っている!」など、契約書に関するご質問がありましたら、ブログ等で可能な限りお応えしますので、上記「お問い合わせ」より、お気軽にお寄せください。
また、商工会議所などの公的機関や、起業支援機関(あるいは各種専門学校)のご担当者で、
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最後まで、お読みくださりありがとうございました。

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